現役MRが語る!2019年の製薬会社リストラ状況と原因や今後!

製薬会社とリストラ

どうもこんにちは、だいさくです。

2019年はブリストルマイヤーズがセルジーンを8兆円で買収したり、

イーライリリー社のLoxo買収、GSKのTESARO社買収など、

なんだか激動な始まりでした。

また、2018年は製薬業界にリストラが吹き荒れた年でしたが、

2018年の製薬会社リストラまとめと世間の勘違いについて

2019年はリストラもかなりありそうな予感がしますね。

2019年のリストラはこれまでの製薬業界で行われていたリストラとは、

少し違う傾向も見えて来ているので、

その辺をまとめてお伝えしていきたいと思います。

2019年の製薬会社リストラ状況と原因、今後まで全部まとめてみる!

昨今なぜMRを始め、製薬企業のリストラが横行しているかというと、

答えは簡単で、製薬企業が儲からなくなっているからです。

化合物は枯渇化し新薬が出にくい、

これまで大規模臨床試験を行って沢山の人に安全に投与できる薬剤を作るのが大手製薬会社の、

得意分野でしたが、時代は完全に個別化医療に突入。

そうすると台頭してきたのはバイオベンチャーです。

新薬開発は完全にバイオベンチャー に負けてしまい、

利益率の高い自社開発ができなくなり、

他社から薬剤を買い付けるライセンスビジネスになっています。

また日本国の医療費削減のための薬価抑制のためせっかく新薬が出ても儲からない、

そんな状態を今製薬業界は迎えています。

薬価改定と新薬不足の影響で中堅内資製薬がマズイ・・

本記事では現在の製薬業界や、MRの状況を詳しくまとめています。

2018年の製薬会社のリストラを振り返る




まず2018年にリストラを実際に行った会社をこちらでまとめてみます。

社名 人数 条件 備考
武田薬品 約3000人が対象
(社員の7%)
武田薬品の社員全員 MRからは300人(MR2400人中)
サノフィ 250人(27歳以上?) MRを含む全体
5年で5回実施してる
塩野義 段階的に100人程度 削減かMSLへ再配置 MRの割合を減少させる
大正HD 948人(確定)
(HDの社員3000人中)
勤続10年以上かつ40歳以上 創業以来初めて
ベーリンガー 約300人以上
(MR1100人の3割)
MR全員
(若年層含み)
CSOを全て契約解除も決定
ファイザー 人数未定 全社員 段階的に縮小する
GSK 人数未定 全社員 段階的に縮小する
エーザイ 段階的に300名程度 45歳以上かつ勤続5年以上の社員 3回に分けて段階的に実施:1回目は100名
ノボノルディスク 全社員1100人の10〜13% 全部署が対象 薬価改定による減収

2018年のリストラの特徴といえば、

研究部門の方のリストラだったと思います。

昨今の候補化合物の枯渇化、

メガファーマにおいては承認された新薬のほとんどが

他社からの導入品であったことが背景として考えられています。

世界の名だたる名門製薬会社の大半が自社で創薬ができない状況であり、

それにより研究部門がリストラ対象になった、

というのが一つのトレンドとして背景にありました。

もちろんリストラ対象者が全員研究部門というわけではありませんが、

製薬会社は研究してナンボの世界、

研究しなければそもそも創薬できない、

創薬できなけりゃ製薬会社としての成果も出ない、

にも関わらず研究部門をリストラする製薬会社が

例年よりも多くみられたのが特徴的な1年だったのかなと思います。

2019年度にリストラを発表した製薬会社

こちらが2019年度(10月時点)にリストラを公表した製薬会社になります。

社名 人数 対象 条件 原因
協和発酵
キリン
定めず
45歳以上/
勤続5年以上
割増退職金と再就職支援 選択と集中によるスリム化(だと思われる)
鳥居薬品 定めず
(社員の3割)
基本的に2年以上の社員全員 割増退職金 HIV薬のギリアドへの変換
アステラス
製薬
600人程度 関連会社含む 割増退職金と再就職支援 2020年までに300億の利益改善
(定期的なリストラ)
中外製薬 172人 MRを含む社員(一部のぞく) 割増72ヶ月分の退職金 ビジネスの変革
MSD 250人規模 営業部門(MRはプライマリー) 割増退職金 スペシャリティへの転換(2年前も実施)
サノフィ 200人規模 ほぼ全社員 割増退職金 MRはプライマリーが対象

協和発酵キリンのリストラは先日も書きましたが、

協和発酵キリンが初めてのリストラ開始!理由がいまいち理解できないぞ!

理由は今だによくわかりません。

リストラ発表後に株価も一時期ストップ高になりましたし、

リストラ公表文章もエーザイの文書を真似してるような内容でした。

対象が45歳以上で、

社長の交代にも関連した経営方針の変化に過ぎないのではないかと思います。

鳥居薬品は単純にギリアドから導入していたHIV薬(売上の3分の1以上を占める)

のギリアドへの返還が大きな要因になります。

アステラス製薬は4,5年に一度の割合でリストラしております。

2014年の時は300人程度の募集で、

430人が早期退職で退職していきましたので、

定期的なリストラと言えると思います。

MSD・サノフィのリストラ対象はプライマリーMR

2019年のリストラとしては、

やはりプライマリーMRが露骨に対象となってると言えます。

MSDやサノフィではビジネスがプライマリーからスペシャリティにうまく転換したものの、

プライマリーMRの人員削減がどうしても必要となっており、

対象はプライマリーMRとなっております。

2019年製薬会社は何故リストラをしているのか?

2019年度の製薬会社のリストラの原因ですが、

その主な原因としては、

・後発品シェアに関する国策

・薬価改定の制度改革

この2つだと考えられます。

遠巻きには今回の協和発酵と鳥居薬品のリストラの原因にもなります。

MR界隈では常識的なこの2つの事ですが、

よくご存知ない方のためにこの制度改革がなぜ製薬企業の利益を圧迫して、

リストラを促しているのかを簡単に説明します。

もしご存知ない方は必ず読んでおいて損はないので、

この機会に是非ご一読ください。

 

後発品シェア80%の国策


後発品の国内シェアを平成32年までになるべく早く80%まで持っていくという国策のような使用推進策が平成27年6月の閣議決定において決定されています。

これは段階的なものではありましたが、現在は平成32年まで(と言わず早ければ早いほど良い)に80%まで使用割合を増やすというものです。

2018年2月に開かれた中医協(中央社会保険医療協議会)の総会にて、後発品調剤数量がこれまでの65%以上で18点、75%以上で22点から75%以上で18点、80%以上で22点、85%以上で26点と変更され

後発品を多く処方している医療機関が儲かる仕組みに変更されました。

この国策から当然医療機関では後発品のシェアを上げようと、特にシェアの上がりそうな飲み薬を中心にどんどん後発品に変更されています。

普段新薬しか扱ってないトップメーカーの場合は、自分がいる製薬会社の利益は薬価の高い新薬が引っ張っているんだ!と考えている人もいると思います。

確かにそれはそうなんですが、え!この製品ってうちの製剤なの?という、普段ほとんど話もしないような製剤を集めたら何やかんやで100億以上の年間売上があることも普通にあります。

特にトップクラスのメーカーほどそういったほとんどコールしない薬剤の売上が、屋台骨を支えているケースが往々にしてあるのです。

 

薬価改定の制度改革


2018年4月から施行されている薬価改定の制度改革ですが、正式には、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」から派生したものです。当ブログでも何度も書いておりますが、これは非常にシンプルなもので、厚労省とメーカーが事前に考えていたよりも、多く売れている薬剤の薬価は適正価格まで下げますというもの。薬価改定はそれ以前までは原則2年に1回行われておりましたが、原則1年に1回行うというものに変更されました。

これまでは製薬企業の当たり前の戦略として、新薬はまず患者数の少ない希少疾患から適応を取り、高薬価をつけたあとで患者数の多い疾患の適応を取るという戦略を取っていました。

今後はそういった戦略をとって年間1,000億円以上売れるようなブロックバスターと呼ばれる薬剤は間違いなく出ないようになります。

原則改定は年に1回ですが、市場規模が350億円を超えたものは、年4回の新薬の保険収載の機会に市場拡大再算定ルールに従い、速やかに薬価が改定されます。

実際小野薬品のオプジーボの薬価は薬価収載時と比較して76%安くなりました。

薬価収載時 2018年11月より
100mg 72万9849円 17万3768円
20mg 15万200円 3万5766円

 

2019年中堅内資製薬のリストラは今後も続く




簡単ではありますが、現在の製薬企業のリストラの原因、

・後発品シェアに関する国策

・薬価改定の制度改革

この2つについてお伝えできましたでしょうか。

この2つの状況が、昨今の製薬企業のリストラを招いています。

特に今後は新薬を出せない(もしくは買えない)

中堅内資製薬には非常に厳しい時代に入ります。

後発品シェアに関する国策がなぜ中堅内資に厳しい状況を招くか?というと、

上述の通り長期収載品が売上の半分以上を占めるような会社は後発品に変えられてしまいます。これは完全に国策化しており勢いは絶対に止められません。

僕がいるバイオベンチャーでの立ち上げあるあるとして、

バイオベンチャーの立ち上げの会社ほど参入後3、4年赤字が続くことがあるんですが、

そういった会社は上述した屋台骨を支えてくれる古い薬(長期収載品)がないのも実は要因の一つだったりするのです。

現在のシンバイオなんかもそうですが、立ち上げに向けてずっと赤字ですし、今後2年くらいはもっと大きな赤字になると思います。

ただ、バイオベンチャーには新薬があります。

その新薬が今後大きな利益をもたらしてくれる可能性があるので赤字でも良いのです。

それが逆の場合が起こっているのが中堅内資になります。

目新しい新薬も出ない、会社の屋台骨は長期収載品だけ、

国策としての後発品シェア80%目標、

この状況は間違いなく今後も続いて行きますので、

屋台骨を支えられる新薬がないのであればまず間違いなくリストラは続きます。

 

薬価制度の抜本改革はいずれ終わる


これは個人的な予測ですが、

後発品の国策とは違い、薬価制度の抜本改革はいずれ終わると思います。

終わるというかもっと緩和されるのではないかと。

この制度の施行が決まった時、

イーライリリー社の本国の社長と、

メルクの本国の社長が厚労省に対して、

350億というラインが低すぎること、

イノベーション度の高い新薬も低い新薬も全てが儲からないように改定されたことなど、

薬剤のイノベーションを阻害するとして強烈なクレームを入れています。

実際にメルクの会長は日本への投資は抑えると発表しており、

今後の外資の日本離れを加速させることが予想されます。

この抜本改革は薬剤の良し悪しが判断できない人が施行したと言われており、

恐らくこの制度がずっと続くとは僕は考えられないと予測しております。

ちなみにですが、何故かこの制度の改革にクレームを入れたのは、

リリー、メルク、ファイザーだけです。

何故日本の会社は物申さないのかちょっと謎でした。

2019年の製薬会社リストラ状況をまとめ

以上のことから、

今後新薬が出せない、パイプラインが無い、もしくは微妙、

そんな会社はかなり危ういです。

昨今日本の制度に甘えて新薬開発に積極的ではなかった会社ほど、

淘汰されていくと思います。

新薬開発ができる会社、もしくは新薬のパイプラインを買える会社、

この二つの会社しか新薬メーカーとしては生き残れないのは必至です。

鳥居薬品のようなケースは本当に不運だったと思います。

JTの傘下ということで、完全なる安定企業でしたが、

新卒3年目からリストラ対象になっていることは、

恐らく今後の製薬業界の中でも大きな汚点、

悪いイメージを残すことになると思います。

2019年は製薬会社の隠れリストラもある

2019年2月現在までにリストラをした協和発酵キリンや、

鳥居薬品、アステラスに関してはまだリストラする体力があるので良いですが、

今後中堅内資の経営が圧迫されることによって行われるのが隠れリストラです。

これは非常に汚い手法で、

自主退職を促す家賃手当や日当など福利厚生を最低限まで排除していく方法、

誰か特定の人だけを対象に微々たる割り増し退職金を提示して、

やめて欲しい人だけを会社が選定して辞めさせるという、

隠れリストラが横行するのでは無いかと予想しています。

これは今でも実際にあることなので、

しっかりご自身の会社の状況とパイプラインや、

公開されているのであればバランスシートなどに目を通して、

企業分析した方が良いと思います。

最後に

特に中堅内資という書き方をしてしまいましたが、

実際には昨年リストラをしたノボノルディスクは100人超のリストラをしてますが、

原因は薬価改定によるものとされています。

内資が安心安全の時代は終わりますが、

外資も新薬開発ができない会社は厳しいと思います。

今後は体力のあるメガファーマでしのぎを削るか、

少人数制のバイオベンチャーがやっぱり良いと思います。

今後立ち上げが予想されている会社は結構沢山あります。

希少疾患は今回の薬価改定の改悪制度に全くあてはまっていませんし、

少人数なので忙しいですが、とても魅力的だと思います。

ご興味ある方は是非情報とって見てください。

希少疾患(オーファン)系製薬会社への転職を考える人にオススメの転職サイト

情報とってみるとわかりますが、

僕も転職するまでに1年半かかったので、

気長に待つ必要はあります。

ではまた!




コメント

  1. マリオ より:

    【ご質問】

    いつも興味深く拝読させて頂いております。数多くの情報発信にとても勉強させて頂いている1人で御座います。
    私は現在、コントラクトMRとして活動しております。経験させて頂いたプロジェクトは大手企業でしたが、所謂ジェネラル体制のメーカーであり、プライマリーと専門領域(オンコロジーやリウマチ)を薄く広く、といった活動でした。
    現在の製薬業界の状況を私もひしひしと感じております。その中でオンコロジーやバイオなど専門領域に特化して活動した経験したががない中でも、だいさくさんが仰っているようなバイオベンチャーや希少疾病の領域にいけるものなのでしょうか?

    取り留めもないご質問で恐縮で御座いますが、ご回答頂けるようで御座いましたらお願いしたく存じます。

    今後もブログは拝読させて頂きたいと思います。

    • 大作 大作 より:

      コメントありがとうございます!
      一応ステップとして早いのは専門領域の経験してからの方が良いとは思います。
      ただ、血液内科の記事にも書いたんですが、実際「オンコロジーMRもピンキリ」っていうのは本当に言われていて、
      それならプライマリー系でガシガシやっていた人の方がよっぽど優秀であるという少しの流れがあるのはあります。

      オーファン系やバイオベンチャーは必ずしもオンコロジーの疾患だけではないのですが、
      漠然とオンコロジーMRなどの経験が望ましいみたいな書かれ方がしているので、
      AZとかリリーとか入りやすいオンコ系の会社もしっかり検討しながら、並行して検討していくのが良いのかなぁと思います!

      中々はっきりしない回答で申し訳ないですが、そんな感じかなと。。

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