私はトヨタ系の子会社に勤めていた27歳の時に外資系MRに転職しました。
5年間働いた後、現在では国内大手製薬会社に勤めて3年目を迎えています。
ちなみに領域はオンコロジーMRです。
昨今、「MR減少時代」「MR不要論」など、
MRの今後が心配されるような内容の記事も多くみられます。
これからMRを目指そうという方、
そして現在MRとして働いてる方には少し不安になる情報でもあります。
そこで現役MRの私が、
現場からみたMRの今後の展望を書いていきたいと思います。
MRの今後、MRの数は確かに減少傾向にある
MRが減少傾向になっているのは事実です。
ピークであった2014年末のMR数65,752人から
2016年初頭には64,135人と1617人減少してます。
なんだそんなもんか、と思いがちですが、
MRの人数は、MR認定試験を始めた10数年前からずっと増え続けてきました。
しかし、2014年末をピークに2年連続で減少しています。
また、10年後には現在の人数から2割程度は減少するといわれています。
MR不要論の出現
MRの数が年々減少していく過程で「MR不要論」というものが叫ばれるようになりました。
MRの減少に伴うMR不要論の理由は2つの規制と1つの新しいサービスにあります。
1,接待に対する規制が強化されMRが不要になった
これまでのMRのイメージは、 医師への接待として、
飲み会、キャバクラ、合コン、休日ゴルフ、誕生日や出世祝いに高額プレゼント。
とにかく医師に尽くして、尽くして、自社の薬を使ってもらう。
こんな感じでありました。。
薬学知識よりも、酒が飲めること、ゴルフができること、
カラオケがうまいこと、とにかく面白いことが、
できるMRの条件でもありました。
しかし、これまでの医師への過剰接待などが週刊誌などにも取り上げられ、
問題視されました。
2014年度に医師への接待(飲み会、キャバクラ、合コン含む)は原則禁止になりました。
自費での付き合いも禁止です。
プレゼントは例外として許されることもありますが、
誕生日など医師の私的な理由でプレゼントを贈ることは禁止です。
ちなみに私はMRに転職してから、
医師にいわゆるプレゼントを贈った経験は一度もありません。
ゴルフは製薬会社によっては、
許してる会社もありますが、
医師の分を負担することはできません。
外資系はゴルフも禁止してるところが多いですね。
このため、これまで接待で処方をとっていたMRの必要性がなくなったわけです。
2,情報提供に関する規制が強化されMRが不要になった
現在のMRは文献化されている情報しか医師に提供することができません。
最新の学会情報や、
新薬の臨床試験の情報を提供することができなくなりました。
こうなった原因としてノバルティスファーマのディオバン事件、
武田薬品のCASE-J問題により、
MRの情報提供のあり方が見直されました。
学会で発表された貴重な情報は基本的に文献になりますが、
学会で発表されてから早くて1ヶ月くらいかかります。
通常だと2、3ヶ月はかかります。
その2,3ヶ月の間に医師は情報を知りますので、
MRが情報提供する頃には既に医師は情報を知ってるわけです。
m.3(エムスリー)のCiWORKSの出現によるMR不要論
また、情報提供に関してはインターネットの充実も大きいです。
大きい学会であれば最新情報は医師にメールマガジンのような方法でタイムリーに届きます。
あとは、m.3(エムスリー)という会社が医師向けにアプリを提供していて、
学会情報を速やかに届けています。
新しい文献などはCiWORKSという便利なサイトができ、
著明な医師が解説と私見をつけて配信してますので、
MRが紹介するよりも高度な情報提供をしてます。
特にオンコロジーや、CNSなどの専門領域を診ている医師ほど
CiWORKSは必ず見てます。
ちなみにm.3で実務を行っているのはほとんどMR出身の人間です。
今後はm.3のような形で情報提供するニーズが増えていきそうです。
MRの将来性
これまで、MRの今後、MR不要論の出現に関して紹介してきましたが、
それを踏まえてMRの将来性はどうなんでしょうか。
MRの将来性①MSLは激増してる
MRというのは確かに減少してます。
しかし、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)という形に変化してる会社もあります。
MSLがどういう職業かの詳しい記事はこちらから→MSLの仕事
MSLの仕事は医師や患者さんのアンメットニーズを把握して、
臨床試験の提案をしたり、MRが紹介することができない最新情報を紹介することができます。
MSLの仕事というのは元々はMRが行なっていた仕事なのです。
MSLは2011年度は各社に平均11人だったのが、
2015年度には倍の22人となっております。
2017年度では中外製薬はMSLが100人、
ノバルティスもMSLは200人程度います。
ほとんどが元MRです。
現在の製薬業界でのMSLの人数は把握できませんが、
大体1,000人以上はいると言われています。
冒頭にMRの人数はピークから1500人減少したと伝えましたが、
実際はMSLという名前に変わっただけとも言えるのです。
MRの将来性②m.3の情報提供は一方的である
上述したように、MRの人数は確かに減少していますが、
減少した分、MSLの人数が増えています。
実際は現場の人数としてはほとんど変わっていないのです。
また、m.3の出現に関してもお伝えしましたが、
こちらの記事でも詳しく紹介してますけど、
間違えてはいけないのが、m.3の顧客は製薬会社なのです。
製薬会社からお金をもらっているわけです。
そのお金をポイントに変えて医師に付与してるので、
実際m.3の情報提供の質は高くはないのです。
医師はポイントのために見たふりをしている場合も多く、
メルマガも情報が一方的すぎてほとんど見てないのです。
医師の会員数27万人を売りにしてますが、
それはポイントのためなことが多いのです。
やっぱり医師が知りたい情報をピンポイントで、
痒い所に手が届くことができるのはMRしかいないのです。
MRの将来性③MRは必要である
「MR不要論」をどれだけ外部の人が訴えても、
結局製薬会社にとってはMRはなくてはならない存在なのです。
PMS情報の取得や報告はもちろんMRにとって大事な仕事の一つですが、
MR=医薬情報担当者ではありますが、会社にとっても、
顧客にとってもMRは営業マンなのです。
「MR不要論」の代表格である、プライマリーMRは、
売り上げを確保するためには顧客に対してMR暴露量を確保する必要が有ります。
接待が規制されたとはいえ、医師にそれなりに顔をみせたり、
面白いことを言ったりしないと数字を確保できない領域なのです。
医師にとってはプライマリーMRは必要ない傾向にありますが、
製薬会社にとってはプライマリーMRはまだまだ必要なのです。
そのため、今後MRを目指す人は間違いなく、
専門領域のMRを目指すのがベストです。
MRがなくならない理由②日本の医療は日本全国どこでも行われている
これはどういうことかというと、アメリカや韓国では、
全て疾患ごとに治療できる施設が集約されてます。
例えば、
胃がんになった患者さんは胃がん専門の病院に行きます。
韓国の胃がん治療で有名なサムソン病院は胃がんの切除数が年間3000例を超えます。
日本の胃がん治療で一番大きい施設であるがん研有明病院でも年間500例です。
これは日本の特徴でもありますが、
日本は田舎の小さな病院でも胃がん治療ができます。
アメリカや韓国のように集約されている良い部分は臨床試験が進み易いことと、
専門家が集まっているということがあげられます。変な治療がされづらいこと。
しかし、集約されているがために、
胃がんになった患者さんはわざわざ飛行機や電車を乗り継いで通わなければなりません。
入院できなければ近隣のホテルに泊まらなければなりませんので、
患者さんやその家族は治療のために多大な労力とお金が必要になります。
しかし、日本ではせいぜい電車やバスを乗り継いで、
1時間もあれば通える範囲に病院はあります。
これはとても恵まれていると言えます。
医師の全てが専門家ではない
日本のように集約化されていないデメリットは
医師が専門家ではないということ。
私が最初にMRとして赴任した長野県のとある田舎の病院では、
外科の先生が頭からつま先まで全て診ているケースがありました。
頭からつま先まで全ての疾患の最新情報を常に頭に入れておくことは、
いくら頭の良い医師でも不可能です。
そんな時、自社医薬品の専門家であるMRからの情報提供は
非常に大きな役割を果たすことになります。
私はオンコロジーMR(抗癌剤担当)ですが、
長野県にいたころは定期的に説明会をやってましたし、
医師へのアポイントが取れないことはほとんど無かったです。
むしろ、電話をもらって、
この文献とこの薬に関する情報を持ってきてほしいとご依頼いただいていたくらいです。
日本は医師不足
東京など都市部の医師は専門家であることが多いですが、
それ以外の都道府県では同時に沢山の疾患をみている医師がほとんどになります。
でも日本の医師は世界と比較しても非常に優秀ですので安心してくださいね。
MR不要論は無責任
極端な考えですが、私は東京・大阪・名古屋には専門家が多いので、
MRは必要ないと考えています。
都市部にはMSLなどを配置し、都市部以外の地域にMRをどんどん送り込んだ方が、
製薬会社としての価値があがり、成果もあがりやすいと思ってます。
事実、「MR不要論」「MR絶滅時代」などを書いている
薬剤部長や医師は都市部(東京)の人です。
そういう人は本当の意味で、日本の医療×MRの存在を理解してないんだと思います。
都市部の現状しか知らないのです。
都市部以外でのMRの存在は大事です。
しかし現状は逆で、
都市部ほどMRの数が多いです。
MRの将来性④プライマリーMRの今後は厳しい
・MR人数減少→MSL激増のため実際は変化なし
・m.3登場→MRの情報提供には勝てない
・MRは必要である
このことからMRの将来性は間違いなく高いと言えます。
しかし、プライマリーMR、これまでの接待MR、太鼓持ちMRの将来性は無いです。
良くこのブログでプライマリーMRの人から「いやいや、MRなんて絶滅するよ」
みたいなコメントをもらうんですが、
そういう人は恐らく絶滅するMRの群に入っているんだと思います。
スペシャリティMRは絶滅するなんて絶対に考えてませんよ。
だからプライマリーMRは、とっととスペシャリティMRに転職したほうが良いです。
挑戦もしないで人生なんて変えられない
今後価値が上がる、もしくは現在価値のあるMRはどういう人か?
・スペシャリティ領域のMR(オンコロジーやCNSなど)
・スペシャリティ領域のマネジャー
・希少疾病系の薬剤を広域に渡って担当していた人
・専門家医師(いわゆるドン)にメチャクチャ強い人
MRのあるべき姿は劇的に変わろうとしてます。
現代の価値のあるMRになるために、
勉強が大変ですが、やりがいはとても高いです。
私はMRに転職して人生が変わりました。
現在3社目の製薬会社にいますが、
絶滅するMRになってる人も沢山みてます。
転職する時の製薬会社選びのコツは
「これまで治療薬の無い疾患の治療薬を作ってるか?」
「治療薬があってもその領域で№1もしくはオンリー1の薬を作る努力をしてるか?」
この2つに限ると私は思います。
私のこれまでのMR転職経験を元に纏めた転職サイトランキングを作成してますので、
ご参考ください。
まとめ
以上のことを纏めると、
プライマリーMRの今後は厳しいと思います。
しかし、専門領域のMRは求められる存在ですし、
やりがいのある仕事です。
MRがなくなることは間違いなくありません。
MRがなくなることは無いですが、成果を出せないとどんなMRでも厳しいです。
営業でも人生でも目標設定はとっても重要です。
どんな目標を立てるかで全てが決まります。
こちらの本が通常1980円(税抜き)なんですが、
3月いっぱいまで無料で読むことができます。(送料550円かかります)
武田薬品などの企業コンサルもしてる原田隆史さんが書いた10冊目の本です。
とても面白いので是非読んで見てください!
それではまた!
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MRなんて絶滅するよ