どうもこんにちは、だいさくです。
2021年度の武田薬品株主総会が6月29日に行われましたね。
武田薬品関連の記事ってすごく読まれるんですよね。
製薬会社関連だともうダントツのダントツで、
それぐらい色々な人が注目しているのが武田薬品であるわけですが、
注目されている理由の一つとして武田薬品の株が高配当であるというのがあります。
現在の武田株は買い時だぁ!と言われる一方で、
危険な高配当株とも言われており、
今日はその理由も併せて、
現役で製薬業界で働いております人間としてご紹介させていただければと思います。
武田薬品株買い時到来は本当か?危険な高配当株と言われる理由とは?
今回の株主総会を受けて、
営業利益が5092億、Core営業利益が9679億と発表されました。
現在の株価が3000円台であること、
ピークであった2018年の6500円だったことを省みて、
買い時到来だぁ!!!っていう流れがあるようです。
今回の株主総会の動画しっかり全部見ましたし、
これまで武田薬品に関しては沢山の記事を書いて参りましたので、
その上で本当に買い時なのか?高配当につられるのは危険ではないのか?
という視点で書いていければと思います。
武田薬品の株は中々上がらないので買い時とは言い切れない
武田薬品の株が買い時だぁ!と考えてる人は、
2018年の6500円だった時と比べて半額になっていること、
営業利益が戻ってきていることを指しているのですが、実際はそんなお気楽な状況でもないです。
2018年の時と現在のEPS(1株あたりの利益)を比較してみました。
2018年3月 | 2021年3月 | 2022年3月(予想) | |
売上高 | 1兆8千億 | 3兆2千億 | 3兆4千億 |
営業利益 | 2417億 | 5092億 | 4880億 |
発行株式数 | 7億8千株 | 15億6千億 | 15億6千億 |
EPS | 309円 | 326円 | 312円 |
2018年と比較して営業利益が増えても1株当たりの利益というのは変わってません。
これはご存知の通り、シャイアーを買収した際に全部借金しても賄えないために、
シャイアーの株式と当時の武田の株式を割安で物々交換するようなイメージで、
多量の株式を発行する事で買収を完了いたしました。
なのでこの3年間で発行株式数は倍に増えましたが、同時に株価も半額にまで落ちました。
当然分母(発行株式数)が大きいために中々株価は上がりません。
また現在の武田の株主の40%は外国の投資会社になります。
それが悪いわけではないのですが、
昔のように創業一族が持っていた時代と比べると、
株が高くなった時に一気に売られてしまう可能性が高くなってしまいます。
なので以前と比べると中々上がらない可能性が高いです。
過剰なM&Aによって生じた損失を隠す資料作りに見える
株主総会ってそういうもんだよねと言われればそれまでなんですが、
若干これまでのM&Aで生じている損失や失敗を、
隠すような資料作りに見えるというのも感じます。
これは武田薬品だけの話ではないですが、
日本の製薬会社でグローバル展開している会社は、
Core営業利益、EBITA(イービット)という指標を必ず使います。
この2点は株を買おうとしてる方は必ず抑えておいた方が良い指標で、
あまり他の業界では使われない指標になります。
Core営業利益って何?
Core営業利益って何か?というと、
特に製薬会社の内資系でグローバル展開してる会社の指標でよく使われます。
普通の会社では使われないのですが、
買い時だぁ!と考えてる人は、
この指標を理解できてない気がするのでしっかり理解する必要があります。
Core営業利益っていうのは無形資産償却費を売上高から差し引かない指標になります。
武田薬品の場合こんな感じです。
2021年3月 | |
売上高 | 3兆1987億 |
売上原価 | ▲9943億 |
販売費及び一般管理費 | ▲8757億 |
研究開発費 | ▲4558億 |
無形資産償却費 | ▲4219億 |
その他 | 591億 |
営業利益 | 5092億 |
武田薬品のCore営業利益はこの無形資産償却費を差し引かないで出してます。
ちなみに「のれん」ではないです。のれんは販売費及び一般管理費に含まれます。
この無形資産償却費ってのは、
製薬会社の場合買収した先の会社の特許を含めた開発費用を指すことが多いです。
武田本来の開発費用は研究開発費で計上されます。
このCore営業利益って買収さした先の開発費用を差し引いた指標になると考えられます。
これって本当に妥当な指標だと思いますか?
なんか、買収したことを無理やり良かったことだと思わせるための指標に見えてしまうんですよね。
Core営業利益を使った株主還元
例えば、先ほどのEPSの話ですが、
Core営業利益の観点から考えると指標が下記のように変わります。
2018年3月 | 2021年3月 | 2022年3月(予想) | |
売上高 | 1兆8千億 | 3兆2千億 | 3兆4千億 |
営業利益 | 2417億 | 5092億 | 4880億 |
発行株式数 | 7億8千株 | 15億6千億 | 15億6千億 |
EPS | 309円 | 326円 | 312円 |
Core営業利益 | 2867億 | 9679億 | 9300億 |
EPS(Core) | 367円 | 619円 | 595円 |
このCore営業利益をどのように考えるかなんでしょうけど、
これを見ると株買っても良いかなぁとか、
古くからの株主を納得させるような資料に見えなくもないかなぁと思うわけです。
EBITAは買収によるマイナス面を取り込めない指標
あと、もう一つEBITA(イービット)ですが、
この指標ってそもそもが一般的な会計基準に基づいた指標では有りません。
Core営業利益と同じで、いわば買収を沢山やってる会社のために作られたような指標で、
earnings before interest,taxes,depreciation,and amortizationの略なんですが、
この指標の欠点は、
買収によって生じた損失をマイナス要因として取り込むことができないと言われています。
沢山の買収をしてる会社にとって都合の良い指標とも言われていて、
逆に世界的にはあまり使われなくなっている指標でも有ります。
ウェバー社長は単純なEPSを使わないで、Core利益でEPSを出したり、
純利益ではなくこのEBITAを3倍にすることを目標とした指標を作っています。
EBITAは現在2倍超にまでなってますが、時価総額は2018年と比較すると1兆円失いました。
言ってることが本当なのであれば、配当目的で長期に持つのは有り
1株当たりの配当が180円というのは超高配当と言って良いです。
現在(3600円)買えば、利回りは5%なのでとても良いと言えますし、
この高配当はこれからも維持すると明言されています。
武田薬品は株主が相当うるさいのでまぁ当面は間違いなく維持されるでしょう(黙らせるためにも)
ただし、経営陣が言ってることが本当なのならです。
例えば、
・開発中のナルコレプシー(睡眠障害)に対するオレキシン作動薬が6000億売れる
→うまくいけば2024年度辺りに申請予定で可能性はある
・負債削減が順調に行っている
→恐らくこれはうまくいってる(数字見ればわかるので)
・2015年に着手した研究開発の変革(リストラ)がうまくいっている
→一応武田オリジンが3、4つ化合物として出てきそう
中々株価がめちゃくちゃに上がることは予想できませんが、
配当目的で長期(10年単位)で持つのであればそれはそれで有りなのかなと。
ウェバーの報酬18億は妥当か?
株主総会でウェバー社長の報酬18億は妥当か?という質問がありました。
これには、グローバルの水準(他の外資系)に合わせている。
そうしなければ良い人材は集まらないといった回答がされています。
一方で末端の社員のリストラを行っており、
武田薬品2020年リストラ概要の全貌!割増退職金が60ヶ月!?
超高年収と言われていた武田薬品の年収は今後下がることが予想されています。
MRの平均年収は大体820万と言われていますが、
今後700万台の前半にまで段階的に下がっていくと言われているので、
経営層と末端社員の収入格差っていうのは外資系ではずっと言われていますが、
武田もそのようになってしまったら、
エリート集団武田を維持できない可能性もあるのかなと思います。
最後に
武田の株を買おうかなぁと考えている方向けに書いたのですが、
いかがでしたでしょうか?
個人的にはCore利益と、
EBITAのあたりの文章を飛ばして読んだような方は買わない方が良いのかなぁと思います。
僕は基本的に日本の製薬会社をめちゃくちゃ応援しております。
日本国がバックについて内資系のために医薬品の開発を後押ししてくれる事は100%無いです。
その中で武田薬品は完全に日本の製薬会社がグローバルに比べて劣勢であった時代、
日本国の非チャレンジ精神に抗うように多額の投資をして世界で勝つための戦略を立て、
それを実行していく姿は尊敬してますし応援しております。
(投資手法は置いといて)
シャイアーを買って日本の武田を捨てたとも言われていますが、
実際売上高ランキングも一桁入りを果たしました。
逆に応援する気持ちだけで買っても良いのかなとすら思います。
以上です。
ではまた!
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