MR職の仕事が無くなる3つの理由とは?現役社員が10年後の予想図を綴る

MRの仕事

どうもこんにちは、だいさくです。

もうかれこれ3、4年の間、製薬業界ではかなりの数リストラが実施されてきました。

MRの数を多く抱えている会社でリストラや、

なんらかの人員削減処置を行ってない会社を見つける方が難しいかもしれません。

そうなると、いやがおうにもMRの将来性だったり、

MRにこれからなろうと思ってる人、

もしくはなってみたけどMRの仕事ってなくなるんじゃなかろうか?

そんな風に考えている方もいる少なからずいらっしゃると思います。

今日はそんな方のために、製薬業界で10年ほどMRをしてきた私が、

MR職は本当になくなってしまうのか?その辺をしっかりお伝えしていきたいと思います。

MR職の仕事が無くなる3つの理由とは?現役社員が10年後の予想図を綴る




往々にして「不安」というのは「わからない」ということから生まれますので、

正しい知識と現状整理を行うことによってその不安というのは和らぎますし、

不安の原因を理解することができれば来たる未来に準備をすることができると思います。

長い記事になるかと思いますが、様々な資料も読み込みましたし、

製薬会社で働いている人間として情報を精査してまとめましたので、

是非ご一読いただければと思います。

まずMR職がなくなる原因としては大きく3つあります。

MR職がなくなる原因①MRにできる仕事がほぼ無くされた

私がMRになった当時2010年頃の話ですが、

MRというのは製薬会社の花形職業であり、

MRの営業力が売上の鍵を握っていました。

しかし現在、その頃MRが行えた仕事の9割はできなくなっています。

その原因はノバルティスのディオバンという高血圧の薬のデータ改善です。

これは調べれば沢山情報が出てくるので、

簡単に事件の概要をお示ししますと、

日本で実施された降圧薬であるディオバン(一般名:バルサルタン)は複数の臨床試験において、

データを不正して、虚偽のデータを掲載した論文を発表してました。

2009年頃:Jikei Herat Studyのデータの信頼性に対する疑問が複数回指摘
2011年頃:Kyoto Heart Studyの主任研究者による複数の論文不正が指摘され、翌年に海外の主要医学ジャーナル3誌にて論文が撤回されました
2012年頃:Jikei Heart Study、Kyoto Heart Study、VART研究で統計学的な異質性が指摘

これは海外ではなく日本で起きた事件です!

しかもこの論文不正、データ不正にノバルティスの人間が深く関わっており、

非常に大きな問題になりました。

当然日本の厚生労働省も対応をしなければならず、

2015年に不正行為へのガイドラインを策定したり、

AMEDと言われる研究開発機構を設立したりしました。

ノバルティスのディオバン事件によりMRの仕事はどんどんなくなった

このノバルティスのディオバン事件は、

色々な意味で衝撃を与えたのですが、

その一つがノバルティスはこの事件の初期対応として、

日本の医療制度、日本の医師文化が原因であると開き直った会見をしました。
(ノバの言う日本の医師文化とは、日本の医師が自分の地位と名誉のために論文を出したい、でもめんどくさい事、例えばプロトコール作成や、論文の執筆、臨床試験の参加施設を集める事は全部製薬会社にやらせるという文化が生み出した不正であるから全面的な会社の責任では無いという)

当時僕も覚えてますが、現場の先生方は相当怒ってましたし、

これを機にノバルティスを出入り禁止にした施設も多かったと思います。

この世界に轟く汚名は、日本の厚労省も今の医薬品販売体制が生み出した歪みであると認識し、

この事件を機にMRができる仕事は徐々に徐々になくなっていきました。

MRの仕事 ディオバン前 ディオバン後
臨床試験の立ち上げ・提案 提案、関与はOK
(実際はプロトコール等もMRが作成していた)
全面禁止
学会情報の提供 OK 全面禁止
承認外情報 一部OK 全面禁止
説明会資料の作成 OK 全面禁止
手土産 一部OK 全面禁止
接待 華美過大でなければOK 全面禁止
寄付金 OK ほぼ禁止
ギミック ボールペン、ノート、手帳など基本なんでもOK 基本禁止
説明会時のお弁当 OK OK

まとめてみましたが、多分細かい部分を足せばもっとあると思います。

なので、MRの仕事がなくなる原因の一つはノバルティスのディオバン事件が契機となり、

MR及び製薬会社ができる仕事をなくそうと厚労省が動いた事です。

ちなみにディオバン事件の他に、武田薬品のCASE-J事件とか色々ありますが、

大きな契機となったのはディオバン事件になります。

なのでMRができる仕事は添付文書の情報や、

すでに出ている論文の情報になってしまうので、

それならもうインターネットで良いよねとなり、

今はだいぶ落ち着いたみたいですが、逆にe-MRの需要などは一時期上がりました。

MRの仕事がなくなる原因②スペシャリティへの移行

MRの仕事がなくなる原因の2番目はスペシャリティへの移行です。

スペシャリティというのは製薬業界では”領域特化”という意味で使われるケースが多いです。

製薬業界に馴染みがない人には分かりにくいかもしれませんが、

癌(オンコロジー)や中枢神経や、希少疾患、遺伝病なんかが挙げられていて、

その反対の意味としては、糖尿病領域や高血圧のお薬、整形外科の領域なんかは、

プライマリーと言われ”非領域特化”と考えられています。

厳密に言ったら糖尿病なんかも全然専門領域に特化していると思うんですが、

分かりやすく分けると、慢性疾患が”非領域特化”というイメージになります。

2010年頃から特に外資系製薬会社をはじめその開発の方向性がスペシャリティに移行しました。

なぜスペシャリティに移行したことでMRがなくなるのか?

スペシャリティに移行したことでなぜMRがなくなるのかというと、

極端な例になりますが、

今遺伝子に直接アプローチする遺伝子治療に対する開発が加熱してます。

現状遺伝子に直接アプローチする治療法であったり、

CRISPRという技術を使って病気の元になる遺伝子配列を、

変えていくような治療アプローチが流行っていますし、

今後も流行っていくと思います。

その治療って現状では日本で約11施設でしか治療ができません。

当然11施設しかないのであればそこにいるお医者さんはエキスパートであり、

それこそその治療法が発売する前からすでに治療法や安全性など熟知しているわけです。

スペシャリティというのもそれに近く、

がんの治療というのは基本的には限られた施設でしか行ってませんし、

一人で非常に広範囲を担当することになります。

スペシャリティになるとターゲット施設も減少

今では考えられないですが、プライマリー(非領域特化)全盛時代は、

10個くらい同じような薬剤が存在していて、

それを色々な営業手法を使って営業力で各社が販売してました。

癌患者を受け入れている、いわゆる市中病院の数というのは、

大体8,000施設ですが、

プライマリーがターゲットとする、

一般開業医の数は107,000施設となり10倍以上施設の数が多いのです

なので昔は10個同じ薬剤があってもターゲット施設も10倍あったため、

MRの数を増やして沢山の人数で営業をかければなんとか売れた時代だったのです。

なので、2番目の理由としては、

特に大手製薬会社の開発の方向性が、

MRの人数をそこまで必要としてないスペシャリティに移行したことで、

MRの人数がどんどん少なくなっていった事になります。

MRの仕事がなくなる原因③新薬開発の難易度が上がった




最後3つ目の原因として挙げられるのは、製薬会社の新薬開発の難易度が上がった事です。

上述しましたが、今MRが行える仕事は以前と比べると大分範囲が狭くなりました。

しかし現状でも、副作用情報の収集、新薬の採用活動などは重要なお仕事の一つになります。

既存薬や使用してるかどうかは別として既に医師からの認知度が高い薬剤の売上を、

もっと伸ばすための営業活動はやりにくくなってきていますが、

MRは新薬の立ち上げをするためにいるとも言える職業です。

ただその”新薬”を製薬会社が開発できる難易度が今とても上がっていて、

中々新薬が出ない、出づらい状況でもあります。

現在1つの新薬が出る確率は、

10年前は、1/1.3万化合物でしたが、

現在は、1/2.5万化合物となり、倍近く難易度が高くなっていて、

その難易度は年々上昇しています。

また当然難易度が上がるということはそれにかかるコストも高く、

2018年のデータですと、1つの新薬に必要な開発費用の平均は1900億で、

2004年の621億と比べると3倍以上になっています。

下記は内資、外資の大手企業の研究開発費用をまとめたデータになります。

内資 研究開発費用 外資 研究開発費用
武田薬品 5千5百億 ロシュ 1兆3千億
アステラス 2千1百億 アッヴィ 1兆1千億
大塚HD 2千1百億 米メルク 1兆円
第一三共 1千9百億 ノバルティス 1兆円
J&J 9千億

大手の会社は研究開発費用には莫大なお金がかかっています。

なので、MRの仕事がなくなる原因の3つ目は、

現状仕事の幅が狭くなったMRが唯一求められるフェーズが”新薬の立ち上げ”であるにも関わらず、

その新薬がそもそも出にくくなっているという点です。

厚労省はMRの仕事をなくそうとしてる?

ここまで聞くと、なんか製薬会社が勝手に悪い事して自業自得じゃんって感じもしますが、

実際は、日本国の医療費の圧迫という問題があります。

日本は現在超少子高齢化社会を迎えていて、

当然医療費というのは高齢者が多いので増えるわけですが、

医療費が高騰しないように厚労省が計画的にいくつかの策を立てたのですが、

そのうちの一つが薬剤費を抑えるという事です。

MRに活動をさせない、厳しいプロモーションコードを強いて、

それを守っているかどうかをしっかり社内外から監視する覆面制度を設けること、

また薬剤があまり売れすぎないように定期的に薬価改定を行うように制度変更したことで、

薬剤費用はそこまで高騰してないです。

もちろんそんな事は国は言いませんが、

MRの仕事をなくすことで、

極力無駄に薬剤が使われないよう、

高い新薬が広範囲で使われないようにしてるということは考えられます。

結論とまとめ

最後にまとめと結語になりますが、

MR職の仕事がなくなる原因としては3つになります。

1、ノバルティスのディオバン事件がきっかけでMRのできる仕事が極端になくなった

2、大手製薬会社の開発の方向性がMRの人数を必要としないスペシャリティに移行した

3、製薬会社の新薬開発のハードルが上がった

この3つが主な理由になりますが、

新薬を立ち上げる際にMRは必ず必要になりますし、

実際新薬がバンバン出ている会社というのは随時MRの数が維持されています。

またコロナ禍でMRの存在がいらなくなったことが再確認されたという、

意味不明な話が出ていますが、

コロナ禍に入ったことでMRの活動ができなくなり新薬導入が遅れているという話の方が多いので、

逆にコロナ禍になったことで、MRはやはり新薬のフェーズでは必要であることの証明になったと、

僕は考えています。

ただしかし、今後10年後新薬を拡大するための術として、

何か別の有効な手段があればそちらに取って代わる可能性は十分あります。

それくらいMRの仕事の幅は狭いのも事実ではあります。

僕はMRというより製薬会社で働くことの面白さは十分まだまだあると思っています。

ではまた!




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