2018年の製薬会社リストラまとめと世間の勘違いについて

MRと早期退職

どうもこんにちは、現役MRのだいさくです。

製薬会社にとって、2018年はまさにリストラの年といっても過言ではなくなりそうです。

私がこの業界に足を踏み入れて10年以上経ちますが、

恐らくこれだけのリストラ、早期退職が行われた年はなかったことだと思います。

今日は、2018年にリストラを敢行した会社(2018年11月1日現在において)と

その内容を簡単にまとめて見ました。

これだけの会社がリストラする理由と背景を現役MRの目線で書いていきたいと思います。

2018年にリストラを行った製薬会社をまとめてみる

社名 人数 条件 備考
武田薬品 約3000人が対象
(社員の7%)
武田薬品の社員全員 MRからは300人(MR2400人中)
アステラス 約600人 内勤者含むグループ全体 MRからは幾ばくか
サノフィ 250人(27歳以上?) MRを含む全体
5年で5回実施してる
塩野義 段階的に100人程度 削減かMSLへ再配置 MRの割合を減少させる
大正HD 948人(確定)
(HDの社員3000人中)
勤続10年以上かつ40歳以上 創業以来初めて
ベーリンガー 約300人以上
(MR1100人の3割)
MR全員
(若年層含み)
CSOを全て契約解除も決定
ファイザー 人数未定 全社員 段階的に縮小する
GSK 人数未定 全社員 段階的に縮小する
エーザイ 段階的に300名程度!? 45歳以上かつ勤続5年以上の社員 3回に分けて段階的に実施:1回目は100名
ノボノルディスク 全社員1100人の10〜13% 全部署が対象 薬価改定による減収
ノバルティス 数百名程度 オンコロジー以外の45歳以上勤続5年以上 転身支援あり

現状発表はしてないが、第一三共も業績自体は良いが、

リストラ、早期退職を検討中と有る。

製薬のリストラ・早期退職の形は変わってきてる




これまでも製薬会社がリストラや早期退職を行うことはありました。

しかし、これまでのリストラと違っているのは、

対象が必ずしも40代・50代ではないということです。

これまでは、45歳以上などの年配者を対象に絞り募集人数のリストラを行った後、

新卒や、若年者の中途入社を募集したりすることがありました。

これまでの製薬会社のリストラは年配者をリストラして、

若年者に入れ替えるというのが定説だったのです。

しかし、今回のリストラを見ていると単純に社員の数を減らす方向になっていることです。

2018年製薬リストラで一番ヤバいのはベーリンガーの早期退職

今回のリストラに関する記事を調べていて、

ベーリンガーのリストラはヤバイと思いました。

対象が基本的に全員、諸所の説はありますが、

30代以上で1年以上勤務している人は全員です。

これは中々えぐいです。

ベーリンガーはミカルディスとプラザキサに続く大型製剤が出せなかったことと、

癌領域が立ち上がってみたものの、ジオトリフが完全に多剤に負けてしまったのが、

主な原因です。

これは30代以上ですが、20代の人もほぼ売る薬がなくなってしまうわけです。

逆に30代以上はそれなりの待遇で辞めることができるから良いけど、

残された20代はどうなるのか?

それならいっその事全員にしてあげた方が良いのでは無いかと思いましたけどね。

ノバルティスのリストラも悲しい

あと個人的に衝撃的だったのがノバルティスのリストラです。

ノバルティスは新薬にも恵まれていますが、

2018年12月にオンコロジー以外の方の早期退職を発表しています。

ノバルティスは現在の大手製薬会社の中でも、

自社創薬率が6割とダントツで開発力のある会社です。

なんとか社内異動でもできると良いとは思いましたが、残念ですね。

2018年の製薬会社のリストラ対象者は誰か?

ただ、2018年のリストラはベーリンガーのようなケースはレアです。

実はこのリストラの主な対象者は別にいます。

では、2018年に限っては、その製薬会社のリストラ対象者の多くは誰なのか?

実はその多くはR&Dです。

いわゆる研究者の方が対象となっていることが多いのです。

武田薬品のR&Dのリストラは今年に始まったことではありませんが、

大正HDやアステラスの一部に関しても研究者の方の一部がリストラ対象になっています。

そしてそれは外資系でも同じです。

リストラは日本だけではなく、世界でもガンガン行われています。

そしてその対象者は研究者の方です。

製薬のリストラ理由はMRが不要になったからじゃない

製薬会社のリストラの話が出ると、

何も知らない人は決まり文句のように言います。

MRが不要だからだと。

違いますからね。

製薬会社がリストラを行っているのは、医療従事者側の問題ではありません。

製薬会社側の問題です。

これはMRの方を始め製薬会社の社員はしっかり覚えておいていかなければなりません。

そして、今回のリストラも昨今のリストラも多くの対象者はR&Dだということです。

なぜ製薬会社の研究者はリストラされなければならないのか

では、なぜ製薬会社の研究者の方はリストラ対象になってしまうのでしょうか。

それは、メガファーマと言われる会社の8割は、自社で創薬をしてないからです。

Merck cements its novel drug approval dominance

少し見にくいですが、

これは世界の大手製薬会社の2013年から2018年までに承認された新薬の数です。

全体の実に8割が他社からの導入品、もしくは、企業買収した末に掴んだ新薬になります。

外資系大手の8割ですよ。

世界の名だたる製薬会社の大半が自社で創薬できてないのです。

なぜ研究者の方がリストラ対象に合うかはこのデータをみれば一目瞭然です。

成果(創薬)を出せなかったからです。

一般的に知られている製薬会社は、「営業・開発・研究」この3部門から成り立ちます。

その研究部門が著しく成果を出せないためリストラ対象になっているのです。

逆に言うとMRをはじめとした営業部門のリストラというのは、

導入品だろうがなんだろうが売る薬さえあれば一番手をつけられるのが

遅い部門だとも言えます。

製薬会社のリストラ理由はそれだけじゃない

ここまで見ると、研究者だけなんだ、

良かった・・なんて思ってしまう人もいるかもしれません。

世界的にリストラされていて、その理由は自社で創薬がうまくいかないのは確かです。

しかし、日本でここまでリストラされている理由は、

各社主軸製品の特許切れと薬価改定制度の改革です。

はっきり言ってこの二つしかありません。

主軸製品の特許切れに関しては説明しなくてもわかると思います。

これまで大きな会社を支えていたブロックバスターと呼ばれる薬剤が特許が切れて、

そのブロックバスターに変わるほどの新薬が出せてないためです。

薬価改定制度の改革

そして、薬価改定制度の改革。

これは一番予想外であり、かなり製薬会社の首を絞めたと思います。

この制度の改革に関しても当ブログで何度も説明していますが、

薬価改定を毎年行うことによって、予想よりも売れすぎた製剤を無くす。

最初に承認を取りやすいオーファンから取り掛かり、

そこでついた薬価を対象患者の多い疾患で取っていくやり方をさせない。

1000億以上売れた製剤はすぐに薬価見直しをする。

しかし、オーファンは優遇する。

かなりわかりやすくいうとこのように変わりました。

 

少し僕の愚痴を


ちなみに日本が今回この制度に変えようと試みる理由は

単純に医薬品の貿易赤字対策だとおもいます。

日本国は全体的には貿易黒字ですが、

医薬品に関しては真っ赤かです。

僕は正直今回の薬価改定制度の改革はそれだけだと思っています。

儲かってる外資系イジメではないかと。

ちなみにこの制度改革にクレームを入れたのは、

リリーとMSDとファイザーの社長だけです。

リリーとMSDに関してはわざわざ本国の社長が厚労省にクレームを入れに行きました。

一方で、日本の制約会社は何も言いませんでした。

今回の改革はこれでOKということです。

日本の製薬会社は何にも言いませんからね、厚労省には。

それで結局リストラしてます。

2018年の製薬会社リストラからみる今後の会社選び




話は少し脱線してしまいましたが、

MRの今後はバイオベンチャー か内資系メガファーマかの2択時代になるぞ

この記事でも書いていますが、

僕は現在のこう言った状況から今後生き残るのはうまく商社化したメガファーマか、

バイオベンチャー (オーファン系製薬)だけだと思っています。

実はこれまで当ブログからも具体的にどのような会社が良いですかね〜なんて

ご質問をいただくのですが、私自身もその方のタイプとかをメールではわからないので、

なんとも言いづらいんですが、私自身が色々企業を勉強して見た結果ですが、

今日は具体的にどのような会社が良いのか書いて行きたいと思います。

 

1、今回リストラをしてる内資系


今回リストラをしてる内資系はおそらく大丈夫です。

しっかり現在の苦境を捉えているし、

財務諸表を見ても、武田薬品以外はまず間違いなく大丈夫です。

特に塩野義なんかは取り組み自体が面白いですし、

MRの数を減らすと豪語してますが、

そのほとんどが配置転換になりそうです。

MSLやMAになると豪語してるので、これはとても良い方向です。

そして第一三共に関してもリストラするといってますが、

ただ単に今回のリストラの流れに乗ってるだけです。

後発品(AG)関連がうまく行っていますし、実際営業利益の19年予想は約3%増です。

しかし、麻薬系のUSからの批判を受けてとコメントしてますけどね・・

とにかく、武田薬品以外の、

今回リストラを敢行してる内資系は鉄板で大丈夫だと思います。

武田に関しては、本当にわかりません。

正直シャイアー の機関投資家次第では?という気しかしてません。

シャイアー は7兆円で買うほど中身の詰まった会社ではありません。

シャイアー 自体が3兆円超の借金抱えてますし・・

その辺は本当にわかりません。

ただわかるのは、おそらく社員の給料は上がらないだろうなということくらいです。

 

2、ノバルティスファーマは鉄板


ノバルティスだけはあと10年は大丈夫だと言えそうです。

先ほど示した、世界の大手製薬会社の新薬の数の比率です。

全体の実に8割が導入品、もしくは企業買収を経て勝ち取った新薬であるとお伝えしました。

しかし、ノバルティスだけは違います。

新薬の6割は自社創薬です。

これは、、この時代に本当にすごいことです。

僕は今ノバルティスで働けている人は本当にラッキーだと思うし、

先見の明のある方なんだろうなと本気で思っています。

ノバルティスは、ディオバン事件の時に社長が会見で日本の医者の体質に原因があると、

日本の医者に責任転嫁をした発言で相当嫌われています。

東大との色々な件で東大関連の血液内科からは総スカンくらっていると思います。

しかし、そんなの関係ないと思います。

ノバルティスの研究者や開発チームが優秀なのは間違いありません。

 

3、うまく商社化してる外資系


はっきり言って、しっかり自社で創薬してます!

と言い切って良いメガファーマはノバルティスだけと言っても良いかもしれません。

今後はうまく商社化できている製薬会社というのは絶対に生き残ると思います。

そして、その商社化の鍵となるのが、製薬会社にいる開発チームの花形である、

BD(ビジネスデベロップメント)になります。

いわゆる企業買収を手がけるチームです。

ここが優秀なのは、リリー・ヤンセン・ロシュ・GSKあたりかと思います。

 

4、オーファン系製薬会社


上述したように、オーファンの薬剤だけは完全に守られます。

結局のところ日本の製薬業界を厚労省がどうしたいかによって、

いろんな制度が変更されていきます。

今、厚労省はどうしたいかというと、

少しの内資系メガファーマと創薬ベンチャーという形にしたいのは、

如実にあらわれています。

大雑把な言い方になりますが、少しの内資系メガファーマは、

今回リストラリストに出てきたような会社か、

国内ランキング10位以内に入ってくるような会社です。

あとはオーファン系を含めた創薬ベンチャーだけだと思います。

リストラ者の受け皿は無い

実はこれまで大手の製薬会社をリストラされた年配の方というのは、

CSOや後発品メーカーに行っていました。

しかし、その受け皿はもはやありません。

CSOは切りやすい対象として扱われてしまっていますし、

後発品メーカーはAGの台頭で受け皿にはなりきれてません。

実は、後発品への製剤不安を厚労省に訴えた時、

今でいうAGの話が10数年前に出たんですが、

その際厚労省は雇用の受け皿がなくなるのでAGはダメという決断をしました。

しかし、世界的にAGが加速したのもありますが、

今はAGが完全に台頭してます。

雇用の受け皿も必要ないと判断してしまっているのです。

実力のない男はリストラ対象になると思う

今回の働き方改革を見ていても、女性の雇用は守られます。

それは製薬業界でも一緒です。

女性をリストラの対象にするような会社はクソミソに叩かれます。

冒頭にもお伝えしましたが、リストラ=MR不要ではありませんが、

MRの数自体は減少していき、その姿は、MSLやMA、PMSモニターなど、

新しい形に変わっていきます。

現状MRはバリバリの買い手市場です。

力のない人はやっぱり残れないと思わざる得ないし、

英語は全くしゃべれませんという人は、

お話にならない感じになると思います。

特に若者は絶対英語はやっておいた方が良いです!

若い人ほど危機感を持って今自己投資しておいた方が良いです。

本社勤務したらまず間違いなく英語できないと使えないです。

TOEICとかでなくスピーキングです。

製薬会社の社員におすすめの英語勉強法9選!

最後に

まぁリストラの話なのでちょっと悲観的な感じになってしまいましたが、

MRの形というのも変わっていくんだろうなという気はします。

今後も研究職はかなりしんどいと思います。

開発(MSL・MA)あたりは研究者の方の受け皿になっていますが、

それも限界があります。

MRの受け皿はあぶれた人数ほどは難しいのかもしれません。

まぁこの業界は先行きは厚労省の発言とか、

考え方を聞いてればすぐわかるので、

僕は面白いのはオーファンだと思いますよ。

自分がいるから言う訳じゃないけど、

中々メガファーマにいても給料も上がりにくいと思いますし、

仕事としてやりがいがあって、バブル的に儲かってるのは、

間違いなくオーファンなので、僕はオーファンMRをお勧めします。

ただ、中々募集もかからないので、

しっかり情報収集しておいて損はないと思います。

希少疾患(オーファン)系製薬会社への転職を考える人にオススメの転職サイト

それではまた!




コメント

  1. […] ここで疑問があります。早期退職が実施されているのは事実です。ただ、「早期退職=不要なMRの排除」なのでしょうか。そこで調べてみたのですが、先輩MRブロガーの「だいさくさん」が今回の早期退職についても記事にされていました。MRだいさくの大胆ブログ!http://teigakurekikousyunyu.com/2018-seiyakugaisya-risutora.htmlだいさくさん曰く、18年度の早期退職はMRの削減ではなく、研究開発者の削減がメインだったようです。その理由として、過去と比較して大手製薬メーカーの創薬力が落ちていることが挙げられています。なので、早期退職=MR削減とはなっていないようですね。 […]

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