偉大なる中外製薬が領域性を廃止したことについて現役MRの僕が思う事

中外製薬

どうもこんにちは、だいさくです。

中外製薬さんが領域性を廃止したみたいですね。

この専門MR時代にマジか!と思いました。

でも、自分でもその背景なんかを調べてみたんですが、

すごい納得感があるというか、この会社は偉大だな〜と思いまして、

今日は中外さんが領域性を廃止した件について書いて行きたいと思います。

中外製薬とは?

中外製薬株式会社

社長:小坂 達郎

創業:1925年(大正14年)

本社:東京中央区日本橋

従業員数:7372人(連結)

 

中外製薬はロシュグループ


ご存知の人も多いと思いますが、

中外製薬は2002年に世界有数の製薬企業であるスイスのロシュと戦略的提携をしております。

ロシュ社が中外製薬の株式を半数以上保有したことにより、

ロシュグループの一員になりました。

中外製薬は現在国内売り上げランキング第6位、

ロシュは世界売り上げランキングで第1位となっております。

中外製薬は、もはやロシュパワーではない

中外製薬といえばロシュのイメージがある人も少なくないと思います。

中外がすごいのはロシュパワーのおかげだと言われていた時期もありました。

確かに、リツキサン・ハーセプチン・アバスチンなど、

オンコロジー領域を席巻したバイオ医薬品の数々はロシュからの導出になります。

ただ、そういった薬剤を扱う中で、

医師に対するオンコロジーの情報提供に関するプラットホームを

いちから地道に作り上げたのは中外製薬ですし、

そのおかげでオンコロジーの情報提供のアクセスは相当良くなったと思います。

幸いにも、武田薬品やノバルティスのように厚労省からの指摘を受けずにここまでこれたのも

大きいのかもしれません。

また、最近では中外製薬オリジンの、

関節リウマチの治療薬であるアクテムラ、

血友病治療薬であるヘムライブラ 、

ALK阻害剤であるアレセンサを逆にロシュに導出することに成功しており、

もはやロシュパワーとは言わせないような関係となっています。

中外製薬はもともと領域性

中外製薬というのはもともとオンコロジー部隊と、

プライマリー部隊で分かれていました。

オンコロジーの製剤は、

血液がんから、

固形癌まで多岐にわたっていたのでその中でも領域性に分かれていたかと思います。

偉大なる中外製薬が領域性を廃止したことについて現役MRの僕が思う事




しかし、ここにきて中外製薬さんの領域性が廃止になったそうです。

一部の専門施設では体制が継続されているそうですが、

この時代にすごい決断だなと思うんですよね。

ここからはなぜ領域性を廃止にしたのか、

そしてなぜそれが中外製薬で受け入れられているのか、

そのあたりを私見ですが書いて行きたいと思います。

中外製薬オンコロジーは以前よりは下火

中外製薬のオンコロジー製品というのは、

アバスチン・アレセンサ・カドサイラ・ガザイバ・ゼローダ・ハーセプチン・パージェタ・リツキサン・タルセバ・チガソン

多分、これで終わりだと思いますが、オンコロジーを知らない人でも、

一つはご存知かと思いますし、本当にたくさんあります。

中外=オンコロジー、中外にいればどこにいっても通用すると言われているくらい、

主要な癌のほぼ全てを賄っていました。

しかし、ブロックバスターと呼ばれたバイオ医薬品は相次ぐ特許切れを迎えています。

リツキサンのBSは協和キリンが扱っており、2018年の予測が32億円以上と言われています。

協和キリン リツキサンのバイオ後続品、想定上回る進捗 コスト意識高い医療機関に需要

これはDPC制度を考えると当然のことなんですが、

協和キリンも元々血液内科や移植科にも非常に強く、

従来の後発品とは違いしっかり情報提供もされていることから、

加速度的にリツキサンのBSが浸透しています。

中外製薬オンコロジーとプライマリーの逆転現象

以前ツイッターでもツイートしたんですが、

中外製薬はオンコロジーとプライマリー領域の逆転現象が起きていたと思います。

記事にも書きましたが、

武田薬品シャイアー 買収失敗説の一つ中外製薬のヘムライブラとは?

プライマリーの方ではいくつかピカ新が登場していて、

これまでは中外製薬といえばオンコロジーでしたが、

ヘムライブラが出てきたあたりから、

中外製薬のプライマリーの方が今後熱い領域では?

オンコロジーが逆に下火になってプライマリーの方が価値が高くなってる!?

という逆転現象が起きていたと感じます。

中外製薬が領域性を廃止!?

ヘムライブラなどの血友病に対するピカ新と言われる薬剤はプライマリーが扱うことになり、

2018年に上市された社運をかけた?

とも言えるガザイバをオンコロジーが扱うことになるわけですが、

ここにきて中外製薬が領域性を廃止しました。

ただ、一部の専門施設では依然として領域性を敷いているという話ですので、

全てではないようです。

なぜ領域性を廃止したのか?




ではなぜその領域性を廃止したのか?というところですが、

ここからは僕の私見になりますが、

理由としては3つあると思います。

1、古いオンコロジー製剤は勝手に売れるベースができた

2、ガザイバはダントツの薬ではない

3、中外製薬のガバナンスが優れている

 

1、古いオンコロジー製剤は勝手に売れるベースができた


古いというと失礼かもしれませんが、

今ある沢山のオンコロジー製剤はほとんどがもう既にそこまで営業をかけなくても、

自然と売れるような体制が整ったのではないかと思います。

アレセンサあたりもALK陽性肺癌ですが、

まぁ間違いなく使われる薬剤です。

特別オンコロジー専門部隊を設けなくても、

オンコロジー未経験者のプライマリー領域の人が今から扱っても、

問題なく使用されるだろうというのが一つあるんだと思います。

 

2、ガザイバはダントツの薬ではない


そして2番目がガザイバの登場です。

僕はこの記事を書くにあたって、中外製薬について勉強する過程で、

ガザイバのことを必要以上に勉強しました。

なぜかというと、

今回領域性を廃止した1番の理由がこのガザイバの登場だからと考えたからです。

ガザイバはリツキサンの後継品のような薬で、

CD20の抗体ですが、リツキサンはタイプ1ですが、ガザイバはタイプ2の薬になります。

ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

CD20陽性の濾胞性リンパ腫に適応があります。

そのガザイバですが、リツキサンがBSにかなり侵食されている環境下において、

リツキサンの市場を全てガザイバに取り替えることができるようなエビデンスは揃っています。

しかし、ダントツの薬ではなさそうです。

作用機序を見ると細かい違いはありますが、正直そこまで大きな違いはなさそうです。

1stラインがRefractoryの症例には鉄板で使われる薬剤かと考えられますが、

1stラインからメンテナンスまでと言われると多分ですが、

簡単ではないと思います。

 

ロシュの定番戦略


ガザイバを開発したのはロシュです。

ロシュは臨床試験の組み方が本当に巧みです。

そもそも1stラインのリツキサン+ケモからの、

リツキサンのメンテナンスフェーズは使うかどうかというのは、

なんとも疑問が抱かれる状況でした(ガイドラインを見る限り)

ガザイバの1stラインの試験であるガリウム試験では、

リツキサンのメンテナンスをやってるのが前提で臨床試験が組まれているのです。

ガザイバ+ケモ→メンテナンス ガザイバという試験の組み方をされているのです。

これのどこが巧みかというと、1stラインでガザイバを選択したら、

メンテナンスフェーズまで必ずやらなければならないような設定になってるという所です。

これはロシュの定番戦略でパッケージ戦略(これは勝手に僕が命名しました)

このパッケージ戦略ってアバスチンでもしょっちゅうやってました。

このパッケージ戦略って結構現場の医師からは、???が出やすいのも事実なんです。

 

だから領域統合した


大丈夫でしょうか。かなり端折ってますが、趣味的な文章になってますね。

まぁ簡単にいうとCD20陽性の濾胞性リンパ腫において、

1stラインからメンテナンスまでガザイバを使用されると、

約2年半くらいずっと高額なガザイバを投与するわけです。

ガザイバの薬価は1バイアル約45万で、

1ヶ月に換算するとフェーズによって変わりますが、

大体140万くらいかと思います。

そのガザイバをリツキサンに取って代わるように、

プライマリー領域と統合して、全社一丸となって、

ガザイバを売り込むというのが、

個人的に考える今回の領域性の1番の理由ではないかと考えています。

まぁリツキサンに挑んで散っていった薬剤は本当に沢山あるんです。

その中で唯一リツキサンに勝った薬剤がガザイバです。

営業力が必要であるガザイバの1stラインからメンテナンスまでのパッケージ戦略を全社一丸となって行う、

というのは合理的な考えなんだろうと思います。

 

3、中外製薬のガバナンスが優れている


今回の領域統合って外資系では絶対考えられないと思います。

普通だったら、嫌だと思うんですよ。

わかんないですが、社員でも嫌だな〜と思っていた社員もいるのではないかと思います。

今の時代にジェネラルって・・

でもそれをしっかり領域統合して、

活発にMR活動ができるのは、

間違いなく中外製薬のガバナンス機能が優れているからだと思います。

ガバナンス機能というのは、

統治機能です。

社員を統治する能力が中外製薬は高いのではないかと感じます。

その秘密は僕にはわかりませんが、

全社一丸となって一つの方向を向く、

製薬会社の各ファンクションがその思いや目標を共有して、

その大きい目標を達成するために頑張る、

それができるガバナンス機能が優れているのではないかと感じます。

最後に

今回の記事を書くにあたって結構中外さんのいろんな薬剤を勉強しました。

ただやっぱその中で領域統合という意味では間違いなくガザイバの登場が

強く影響してるんだろうな〜と感じました。

ただその統合をしっかり統治できる中外製薬はすごいと思いましたし、

中外さんは真面目で勤勉な人が多いイメージを勝手に持っていますが、

その辺も中外製薬の教育の賜物なんだろうと思います。




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