製薬会社から医療機関への奨学寄附金とは何?なぜ怪しまれているの?

製薬会社と規制

どうもこんにちは、だいさくです。

アステラスさんが医療機関への奨学寄附を廃止するというRISFAXさんの記事がありましたね。

簡単に要約させていただくと、

アステラスは直近で1594件、9億8800万円あった奨学寄附金を廃止するとした。

今後(2020年度から)はAMEDが2019年に開設した若手研究者の育成のための「研究奨励金制度」に寄附を行うとした。

このような感じです。

製薬会社から医療機関への奨学寄附金とは何?なぜ怪しまれているの?




アステラスさんがこの制度を廃止した1番の理由は、

「社会の疑念を払拭できない」とされています。

現在では怪しまれるような事はしてないが、

一部のメディアから疑念を呈される報道がされているのも現実である。

そのようにも書かれています。

このアステラスさんの廃止理由に関して、

現役の製薬会社のイチ社員としては思う所がありますし、

僕個人としては全く廃止する必要はないと思っています。

アステラスさんの決断に追随する企業は今の所無いと言うのも、

僕自身は納得ができてます。

今日は製薬会社から医療機関(主に大学)への奨学寄附金とは一体何か?

なぜそれが怪しまれているのか?その辺に関して書いていきたいと思います。

製薬会社からの奨学寄付金とは何か?

まず製薬会社から大学などの研究機関に対して行われている、

奨学寄附金制度とは一体何か?と言う所ですが、

一般的な大義名分としては、

大学をはじめとする研究機関に対する教育・研究等の奨学を目的とした寄附金です。
学術研究の振興および研究助成を目的として行われる寄附金のうち、大学をはじめとする研究機関に対する教育・研究等の奨学を目的とした寄附金が奨学寄附金です。また、奨学寄附金は各研究機関の会計規定等に基づいて受け入れられ、その使途を具体的な学術研究目的に指定するなど、厳格なルールに基づいて運用されています。

※製薬協会HPより

ご存知ない方には想像しにくいかも知れませんが、

簡単に言うと、医学部のある大学や、研究をしている医療機関に対して、

製薬会社から、その研究費用の手助けとなるためのお金を寄附する制度のことを、

奨学寄附金と言います。

日本の大学では様々な研究が行われていて、

今日の医療の発展に少しでも貢献できるように奨学寄附を行うというものです。

奨学寄附=Scholarship donationsという事で、

MR間では通称「S(エス)」と言っていたり、「SD」と言っていたりもしますね。

現在の製薬会社からの奨学寄附の基本的ルール

現在行われている製薬会社から研究機関への奨学寄附の一般的なルールですが、

まず製薬会社から医療機関へお金が渡る事によって、

その製薬会社の薬剤に有利な研究に使われる事が無いように、

研究は基本的に自社医薬品以外で、臨床研究ではなく「基礎研究」を対象とし、

その研究結果の報告までを医療機関に求めています。

また大学の寄附講座は対象外となり、医師個人からの申請ではなく、

診療科や教室毎の申請、1大学1申請など、

その製薬会社の薬剤を好意的に処方される事が無いよう、透明性が担保されており、

その金額も華美な金額ではいけないとされています。

営業目的でその制度が使われないように公募制を敷かれ、

医療機関から各社の申請フォームに記入してもらい、

その製薬会社の研究者もしくは団体が判断し奨学寄附が行われる医療機関が選定されます。

中には、医療機関名をマスクし、研究目的だけで寄附先を選定している会社もあります。

また基本的には現場のMRにはその公募結果は開示されないようにしてる会社も多いです。

しかし、ルールに関しては厳密というより、

各社の倫理規程によって決められている部分もあるため、

今紹介したようなルールが一般的なグランドルールとイメージいただければと思います。

製薬会社から医療機関への奨学寄附の金額

では、ここ最近で製薬会社から医療機関への奨学寄附金はどの程度だったか?という所ですが、

下記の表にまとめてみました。

会社名 17年寄附額 18年寄附額 1件当りの寄附額
(18年度の件数)
中外製薬 15億8240万 14億7000万 97.93万(1470件)
武田薬品 11億5733万 10億2600万 94.12万(1026件)
アステラス 13億5400万 9億8800万 61.98万(1594件)
エーザイ 10億5000万 9億7300万 61.81万(1574件)
第一三共 10億9300万 9億3300万 55.53万(1680件)
塩野義 6億7300万 6億2600万 56.85万(1101件)
ファイザー 7億9557万 5億9900万 件数不明

内資と外資では少し違った




とにかくお伝えしたい事は、

現在では製薬会社から研究機関に対して行われている寄附金制度に関しては、

各社細かいルールや意識レベルは異なってしまうかも知れませんが、

アステラスさんがいうような社会からの疑念を抱かれるほど、

変なものではないと僕自身は感じております。

ただ、これは僕自身が大手の外資、内資と経験した上での事ですが、

僕が外資系製薬会社に入社した約11年ほど前の時点で、

その外資系では奨学寄附にMRが携わることはなかったです。

あるとしたら、教授から依頼されて公募に関する要項の紙を持って行ったことがあるくらいです。

そして少額でも寄附が入ると心から喜んでくれてたのは確かです。

その数年後に内資に転職したのですが、

その時にはまだ普通に戦略的に奨学寄附は行われてました。

それどころか、MR単位やチーム単位で、寄附に関する予算を持っていたし、

「先生、寄附は薬を使ってくれないと入れることはできないんですよ?」とか、

「寄附金入れるので臨床試験してください」とか、

そんな会話があったと思います。

ただ外資系がその辺は相当シビアになっていたし、

世間の強い風を受けて、僕が内資に転職してすぐぐらいにはMRが寄附の予算を持つこともなく、

全て公募制に変わりました。

外資が偉かったかと言うと決してそう言うことではなく、

外資が一気に厳しくなったのはノバルティスのディオバン事件でこの寄附制度が癒着の一種だと、

報道されるようになってからで、

それまでは上記の表では大体1件の平均は中外製薬が最高で94万円ですが、

当時は普通に1件500万とか、1000万とか入っていて、

奨学寄附をエサに処方誘導していたのは事実だと思いますが、

厳しくするのが内資の方が数年遅かったと言うだけではないかと思います。

昔と今は違う

確かに、アステラスさんの言うように「社会の疑念」を抱かれるような、

寄附の仕方をしていたのは紛れもない事実だと思います。

ただ、昔と今は全然違います。

今、戦略的にMRが寄附に関する予算を持ったりしてる会社なんてありません。

→これは一応主要な会社の寄付に関するルールは確認しましたが、もしかしたら一部ではまだMRが予算を持っている会社もあるかもしれません。

アステラスさんが「社会の疑念を抱くから」と言う理由で、

この寄附を廃止してしまうのは違うのではないかと思っております。

むしろアステラスさんはまだそういった疑念を抱かれるような寄附のやり方をしてるの?とすら思ってしまいます。

はっきり言ってAMEDがだらしないから民間で研究をやらなければならないって

考えてる研究者もいるし、

医療資源や人的資源、そしてお金の面でもジリ貧な日本の民間研究機関において、

大きな臨床試験を行う事ってまず無理で、

頑張るべき分野はやっぱ基礎だと思うので、

今の製薬会社からの奨学寄附制度は僕は悪くないと思っております。

臨床研究法が見直され、

【要チェック!】臨床研究法が見直されてる!これは注目しておいた方が良いぞ!

製薬会社からの資金提供に関しても厳しくなり、

その前後で、日本の臨床研究は、7割が観察研究になってしまい、

介入研究が3割まで激減してしまいました。

確かに製薬会社からの資金に頼らざる得ない状況に問題があるのかもしれませんが、

創薬や臨床研究というのは研究者の方の知恵や熱意に加えて、どうしても資本が必要なわけで、

適切に行われているのであれば僕は問題ないのではないかと思います。

むしろ、今後どうなる日本の医学研究?っていう感じではないかと思います。

最後に

すいません、話が脱線してしまう部分が多々ございましたが、

んじゃ、お金を入れたところで、日本の研究機関が何をできるの?

ただの医療資源の無駄になるような試験ばっかりしてるじゃない?

って仰る人もいるんですけどね。

それでもやっぱり日本初の新薬がどんどん出てきて、

グローバルで成功して、日本が潤えばとても嬉しいので、

僕は中外さんの寄付金が多く見えることに関しては、

別になんとも思いませんし、

はっきり言ってAMEDってお金にそこまで困ってないので、

アステラスさんも別にわざわざAMEDにお金提供しなくても良いんじゃないかと思ったりします。

そして外資系はもっと日本の研究者にお金出してくれないかなと思った次第です。

ではまた!




 

コメント

  1. 安達鈴木 より:

    今、戦略的にMRが寄附に関する予算を持ったりしてる会社なんてありません

    →小野薬品や大鵬はまだ持っている

    適当なリサーチで断定するな、ボケカス

    by安達進

    • 大作 大作 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      一応主要な会社の奨学寄付に関するルールは調べて書いたのですが、
      HPと実際では違う部分があるのかもしれません。
      一応こちら小野薬品と大鵬薬品のリサーチサポートの資料になります。
      小野薬品
      https://kifu-shinsei.jp/kifu-entry/cmn/doc/index_N1gsZhJaOt.html
      大鵬薬品
      https://www.taiho.co.jp/csr/compliance/medical_policy/

      小野薬品の方はわからないですが、大鵬さんの方は厳密な文言が書かれてないので、
      確かにその可能性があるかもしれません。

      リサーチ不足で申し訳ございませんでした。
      記事の方も一部修正いたしました。

  2. 通りすがりのMSL より:

    いつも楽しく拝見しております。
    奨学寄付金に関しては現場レベルではコントロールできない、タッチしていない会社が多いとは思いますが
    元をたどるとマーケやメディカルが戦略的に入れて自社製品の自主研究を促している部分はまだまだ存在すると思います。
    また、MRがタッチできない奨学寄付金に対し、顧客サイドから額などに不満が来て情報提供活動に支障をきたす部分も少なからずあります。
    奨学寄付金がなくなると研究活動がまわらなくなるのでは?という見解はその通りだとは思いますがそれはまた別の問題も絡んでおり、奨学寄付金が処方誘導になっている側面はまだあると思います。
    そんななかアステラスが率先して舵を切ったことは驚きました、むしろ多くいれており恩恵を受けていた側の会社だと思っていたので。
    疑念意外にも、バジェット削減の側面を感じました

    • 大作 大作 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      大変勉強になります。

      確かにバジェット面の問題もありそうですね。
      奨学寄付で臨床試験の誘導、おそらく医師主導しかないと思いますが、
      それに応じる医師がいらっしゃるんですね。
      いくら入ってるかはわからないですが、
      そのお金以上のタスクがかかりそうな気もしてしまいますが、
      所変わればですね。

      でも確かに奨学寄付を入れなくても別に構わない会社ほど少ない額しか入れてなイメージはあったりします。。。

  3. 3zai より:

    奨学寄附=Scholarship donationsがその名の通りに
    本来あるべき思想(学問・研究の発展を純粋に応援する気持ち)に基づいたものであるなら
    大作さんが仰る通りなんの問題もないと思います。

    周りから疑念を持たれてるからといって
    国内トップクラスの会社が取り下げるなんてちょっと寂しい気もしますが
    奨学寄附をやめる会社がAMEDやそれに類する組織にお金を入れて
    AMED等の組織がきちんと機能するのであればアリといえばアリだとは思いますが
    振込先変更に伴い奨学寄附が少額寄附になったりするかも。。。
    安易なコストカット対策ではないことを祈りたいです。

    営利企業であるがゆえに純粋な気持ちの寄附を穿った目で見られ
    感謝されるどころか非難や疑念をぶつけられる事があるのも事実なので
    新設の資金再分配組織は研究資金の提供元、提供先両方のサポートに加えて
    組織の意義啓蒙に勤しんでいただきたいトコロです。

    資金不足による医学研究(さらには医学以外の研究も)の遅れは私も懸念しております。
    最近、資金調達手段としてはクラウドファンディングが流行りですが
    研究者、科学者に特化したようなクラウドファンディングってありますでしょうか?
    金額が高いうえにリターンが見えにくい研究という領域に
    クラウドファンディングは向かないですかね?

    • 大作 大作 より:

      コメントありがとうございます。
      別の方もバジェット面ではないか?という風におっしゃっていたので、
      確かにその面もあるかもしれませんね。

      クラウドファンディングで、確か大阪の大学の先生が100万くらいでしたか調達してましたよね。
      全然私の知らない分野の話だったのですが、こういう時代というか、
      むしろなんとなく僕は同時にさみしい気持ちになったのも事実で。。

      クラファンはおっしゃるように、難しい気がします。
      むしろバイオベンチャー立ち上げて投資を募る方が早そうではありますが、そんな簡単ではないですよね。

      とても勉強になりました。
      ありがとうございます。

  4. 現役 より:

    いつもブログ楽しく拝見しております。
    奨学寄付金に関しても、大変勉強になります。
     最近も衝撃的な言葉を聞きました。「先生、テーマ頂けたら〇〇万円引っ張ってきますのでお申し付けください」
     ある内資系企業担当者の言葉です。
     他の方もおっしゃられるように今現在も戦略的に寄付を利用している企業は内資系中心に見受けられますよ。営業が一切寄付に関われない企業もあれば実質紐付けで寄付を行なっているメーカーもあります。寄付に関われない会社の社員の立場としては寄付金の採択可否によって出入り禁止や処方全面切り替えが決まりますので気が気ではありません。
     営業が関われるお金は果たして疑念のないお金と言えるのでしょうか?
     残念ですが今の制度は戦略的に寄付を行えるメーカーへの実質的な処方誘引になっていると思います。
     

    • 大作 大作 より:

      コメントありがとうございます。
      とにかく今回記事を書いてみてわかったことは、
      ほとんどの奨学寄附は処方誘引なんだなってことでした。

      そして奨学寄附をして処方誘引をしなくても良い薬剤を持つ会社はしてないんじゃないかって感じました。

      僕は製薬会社云々というより、日本の研究大丈夫か?っていう気持ちがあって、
      僕が考えてもしょうがないんですが、
      日本の研究者の方に頑張ってもらって日本からベストインクラス出してもらいたいんですよね。
      結局医師や研究施設が研究費用を恵んでもらってる状況ではなく、
      自らそれを稼げるような仕組みが必要なのかなと感じました。

      こちらこそ大変勉強になりました。
      ありがとうございます!

  5. Abc より:

    製薬企業が行う、大学への奨学寄付はじめほとんどの資金提供は、短期スパンの処方誘導や利益誘導だと思います。

    また、大学から、新薬は、まず生まれません。基礎研究は、教授達の飯の種ですが、5年スパンで動く製薬企業には、時間と金の無駄です。

    万が一、新薬が生まれたとして、20年後です。そんな宝くじを当てにする製薬企業は、今後、存在していけないでしょう。

    これからの製薬企業が目指す道は、基礎研究への寄付などという不確実性の高いものに頼らず、薬価引き下げに耐えて利益をだして、大学やバイオベンチャーが売り込みに来る無数の応用研究へ投資して行くことだと思います。

    • 大作 大作 より:

      コメントありがとうございます。
      先生方の熱意を感じる瞬間はありますが、
      大学から新薬が生まれてくるイメージは確かにあまりありませんね。

      応用研究へ投資するというのもおっしゃる通りだと思います。

  6. 独身MR より:

    奨学寄付金が処方誘引になってる事実は否定できないと思いますが、逆に大学からのプレッシャーになってるのも事実だと思うので、大学の方も正直どうなんかな?というのが私の感想です。

    「寄付金出さなかったら〇〇の採用カットして他剤に全切替する」
    「もうお前のところが新薬出しても採用しない」

    なんてやり取りを今まで少なからず見聞きしてきました。
    現場の担当者や会社としても、処方を左右する大学の存在は無視できないので、本当はフェードアウトしたいけど泣く泣くやってるパターンは多いと思うので、ある意味アステラスの今回の動きは、評価されるかどうかは別として、率先して動いたことに関しては良かったのかなと思います。

    • 大作 大作 より:

      どうもです。
      まぁそんなところなのが現状なんでしょうね
      泣く泣く出すことを了承できる会社もそれはそれですごいっすけどね。。。

  7. 昔のMR より:

    風が吹けば桶屋が儲かる。
    いやいや弊社は医学の発展のために見返りなど期待せず協力しております。 

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