【前編】遺伝子治療領域が熱いぞ!研究開発状況と課題をわかりやすくまとめた!

遺伝子治療

みなさんこんにちは、だいさくです。

僕のブログでは、今後遺伝子治療が熱いよ〜というのはずっとお伝えさせていただいてました。

恐らく今の僕ら世代の人は将来的にきっと遺伝子治療の恩恵に預かる時が来ると思います。

日本の製薬会社は遺伝子治療に取り組んでいる海外のベンチャー買収に力を入れているし、

海外創薬ベンチャーで立ち上がっている会社は、

遺伝子治療に取り組んでいる会社が非常に多いです。

もうそれはそれはとんでもない数で、

おそらくそんなに遠くない未来には疾患を引き起こしている原因遺伝子に、

直接アプローチするのが当たり前になってくる世の中になると思いますし、

この勢いは止まらないと思います。

そこで今日は遺伝子治療とは一体なんなのか?

何が魅力的なのか?そしてみなさんがよく知るようなビッグファーマの開発状況、

結構課題も多いのでその辺をわかりやすく解説させていただければと思います。

一気に書いてしまいますと非常に長くなりますので、

今回は前編後編の二本立てでお楽しみいただければと思います。

遺伝子治療領域が熱いぞ!研究開発状況と課題をわかりやすくまとめた!




僕自身は、27歳の時にMRになって、それからずっとオンコロジー領域を経験しました。

今年39歳になったわけですが、現在はこの遺伝子治療に関わる部分で、

ビジネス部門の事業開発に従事しております。

僕のキャリアはこの遺伝子治療と共に終わっていくことができれば結構幸せな気はしていますが、

実は自分でも遺伝子治療に関する創薬ベンチャーに少し投資をしていたりもして、

かなり調べております。

遺伝子治療っていくつか種類があったり、

いわゆる送達経路ってのがすごい重要になります。

ただ調べると本当にわかりにくいし、全然理解できない部分が多いんですよね。

僕もこの遺伝子領域に携わるようになってから、いくつか記事を書いて参りましたが、

※ブログの”遺伝子検査領域が熱い!”のタブをご覧ください。

やっと意味がわかってきた今日この頃なので、

これから訪れる遺伝子領域ブームを見据えてる方とか、

ん?遺伝子治療って熱いの?なんとなく知りたいなぁという方向けに、

わかりやすく書いて参りたいと思います。

遺伝子治療って何?

では遺伝子治療って何?ってところなんですが、

遺伝子治療と言っても意味は広義にわたっていて、

以前中国の医師がゲノム編集を行なった赤ちゃんを世界で初めて出産させましたが、

そのようなスーパー人間を生み出すような行為ではなくて、

現在世界中で疾患を治すためのアプローチとして開発されている、

「遺伝子治療」を指します。

遺伝子治療のパターンは簡単にまとめると下記4つがあります。

in vivo遺伝子治療 ex vivo 遺伝子
(細胞)治療
in vivo ゲノム編集療法 ex vivo ゲノム編集療法
正常な遺伝子を保有したウイルス(遺伝子ベクター)を直接投与する 体外に取り出した自分の細胞に遺伝子導入を施し移植する ゲノム編集のハサミを直接体内に導入する 体外に取り出した自分(もしくは他人)の細胞にゲノム編集を施し患者に戻す

すごいざっくりですがこんな感じです。

遺伝子治療の主軸はin vivo遺伝子治療!

この業界にいる方は、遺伝子治療というと、

ノバルティスのキムリアをイメージする人も多いかと思います。

キムリアは自分の細胞を外に出し培養し、

正常な遺伝子を導入した細胞をまた自分に移植するという治療方法なので、

上記の表で言うと2番目のex vivo遺伝子療法になります。

しかしこのex vivo遺伝子治療は培養にかかる時間やコスト、

製剤の不安定さもあり、輸送トラブルの問題もあり今後の開発の主流ではありません。

そういった投与の不安定さと煩雑さの面もクリアし、

また有用なAAVが登場したことによって、

現在はin vivo遺伝子治療というのがほぼ主流になりそうです。

続々と実用化されている遺伝子治療はAAVを用いたin vivo遺伝子治療になります。

なぜAAVベクターを用いたin vivo遺伝子治療が主流なのか?




でもex vivoで自分の細胞を取り出してもらってそれを正常な遺伝子配列に改変してもらって、

元々は自分の細胞な訳で拒絶も起きずに治療できたら良いですよね?

それをやらずになぜ今in vivoの方が主流なのかというと、

AAVベクターが自分の細胞改変よりも有用性が高いからなんですよね。

AAVベクターというのはアデノ随伴ウイルスの略で、

今はAAV8や、AAV9というのが主流なのですが、

その二つの何が有用か?というと、

人体に影響がないけど、しっかり感染してくれるからです。

この影響ないけどしっかり感染だけしてくれるウイルスがAAV8、9なのです。

このAAVベクターはなんとなんと、BBB(血液脳関門)も超えて脳神経細胞にも感染してくれます。

例えば一世を風靡した癌の抗体療法は分子量が大きすぎてBBBを通過できないので、

神経系に転移した場合などは使えませんでしたが、

このAAVは通過してくれます。

今から約10年ほど前からこのAAVを活用して臨床試験次々に開始され有望な結果が得られるようになりました。

記憶に新しいのが、ご存じのノバルティスのゾルゲンスマです。

米AveXis社(2018年にノバが買収)がSMA(脊髄性筋萎縮症)の重症の乳幼児を対象に、

AAV9ベクターに正常なSMN遺伝子を搭載させて、それを静注することで、

立つことは愚かしゃべることもできなかった赤ちゃんの運動機能を改善させ、

生存期間まで延長する結果を出しました。

2021年のノバルティスの決算では、このゾルゲンスマは13億ドルを売上、

世界のブロックバスターの仲間入りを果たしています。

また血友病Bを対象にしたAAV8に血液凝固第IX因子を搭載させ臨床試験を実施し、

長期的に血友病の原因である第IX因子の発現を抑え、毒性も認められないという結果を出しました。

なので、上記の表で言うところでは、安全性も高く、開発がしやすい、

そして投与の煩雑さも少ないことからこのAAVベクターを用いた治療に投資が集中しているのです。

課題はヘテロ疾患への開発と副作用

基本的に癌を始め難病と言われる疾患の原因は遺伝子の異常であることはよく知られています。

しかしこれまではその疾患の症状に対して治療が行われてきました。

いわゆる対症療法。

でも原因となる遺伝子の異常を直接的に変えてしまう、

もしくは間接的に正しい配列を持った何かに働いてもらうことができれば、

こんなにリーズナブルなことは無いし、

絶対に治らないと言われていた先天性の病気を根治できる可能性も出てきます。

しかもイルミナが開発した次世代シーケンサーの登場により、

安価で自分の遺伝子異常を調べることができるようになったこと、

「イルミナ」医療業界を牛耳るかも知れない絶対知っておくべき会社

そしてその遺伝性疾患にアプローチする技術が出来始めたことで、

遺伝子疾患に多額の投資が集まるようになりました。

こちらの記事でも今後2025年までに世界の医薬品業界の成長を牽引するのは希少疾患

【超最新版!】MRの将来性や今後について現役社員が詳しく解説!

と書いてますが、そんな理由があります。

しかし、そんな遺伝子治療にも課題が大きく2つあります。

1、単一の遺伝子疾患にしか効果が無い

遺伝子治療というのは文字通り異常な遺伝子配列を持った病気に対する治療になるので、

そもそも遺伝子の配列に異常がある病気にしか使えません。

しかし、病気というのはそう単純なものではなく、

一つの遺伝子配列が引き起こしている病気の方が少ないわけで、

癌にしても一つの遺伝子異常だけが原因というよりは、ヘテロな疾患が多いと思います。

ヘテロというのは色々な原因が混在してるという意味です。

なので現状では単一の遺伝子異常の疾患でしか中々成果が見られてないのです。

なので先天性の小児疾患や成人の疾患でもわかりやすい遺伝子異常の疾患でしか、

レイトラインの開発が進んでなかったりもします。

でも、これはいわゆるヘテロな疾患にも開発自体は多くされているので、

今後に期待はされております。

2、AAVベクターの副作用

AAVベクターにも副作用があるのです。

先述しましたが、AAV8や9に関しては、安全性が高いのですが、

それは少量だった場合です。

少量の場合は人体になんの害も及ぼさないのですが、

これが大量に投与されるのため、もちろんそれ自体に害はないのですが、

大量に投与されるということは当然体の外に出さなければならないので、

代謝されます。

AAVのベクターは肝臓で代謝されるのですが、

少量だと安全でも大量に投与されることで肝臓にかなり負担がかかってしまい、

高頻度で肝臓にダメージをもたらしています。

ゾルゲンスマとかはまだそこまで多くない量なのですが、

それでも肝臓疾患に問題があれば使えないですし、

予防のためのステロイドが投与が必須となっています。

それ以外にも大量に投与することで血小板の数値が下がったり、中には肝臓癌をもたらし、

臨床試験を中断したケースもあります。

昨年度にアステラスが血友病患者にAAV9を使った臨床試験にて、

1例の死亡例がありさしどめされた事は記憶に新しいかもしれません。

しかし、それだけではなく、この遺伝子治療というのは、

元々自分が持っている遺伝子(疾患の原因とはいえ)の配列を根本的に変えたり、

ベクターによって間接的に変えたりすることで、

特に乳幼児やAYA世代の患者さんへの将来への影響というのは計り知れないものがあります。

正直癌患者さんは高齢者が多いのでそこまで心配はされてませんが、

生殖機能や、将来の自分の子供への影響なども非常に懸念されているし、

そこはまだ明確に長期データがありません。

前半のまとめ

ちょっと前半が長い記事になってしまいましたが、

最後までお読みいただきありがとうございます。そしてお疲れ様でした。

遺伝子検査を安価で精度が高くできるようになったこと、

そして遺伝子疾患に対してアプローチする方法が見つかったことで、

この希少疾患、そして遺伝子治療への投資、開発が加熱しているよ〜ということは

なんとなくお伝えできましたでしょうか。

次回の後半ではどんな会社がどんな開発をしているのか、

その辺をしっかりまとめておりますので、

ぜひ後半の方もお楽しみいただければと思います。

ではまた!




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