MRからの弁当提供は医者の処方に影響を与えるか?論文読んで考察してみた

製薬会社の弁当

どうもこんにちは、だいさくです。

MRからの弁当提供ですが、なんだか物議を醸してますよね。

大手の会社でも全面的に弁当を禁止してる流れになっているという話も聞いた事があります。

僕自身はお弁当を提供することに関しては本当にどうでも良いと思っています。

お弁当提供しないと説明会を開催させていただけない施設もあるので、

お弁当提供が無くなったらめんどくさい事になるなぁと思っているし、

実際そういう施設って増えてきていて、

伝えたい事が伝えられない、伝えられる場所が無くなっている事に、

ジレンマを感じている人もいるのかなと思います。

MRからの弁当提供は医者の処方に影響を与えるか?論文読んで考察してみた




僕自身はお弁当提供の有無よりは、

プレゼンスキルの方が大きなファクターになってくると思っています。

ただお弁当出して、処方してください!と懇願したって絶対に処方なんてされないと思います。

プレゼンで使える資料の中に適応外の情報や、

論文になっていない情報を含んで偏ったプレゼンをする事は生命関連の業界である以上、

ダメだと思います。

なので、今のプロモーションに関する状況は別に間違ってないのかなぁって思う気持ちも、

あるのはあります。

でもそのプレゼンスキル云々より、お弁当の提供自体が処方に本当に影響するのかな?

っていうのはやっぱり疑問なので、

その根拠となる論文を一度しっかり読んでみようと思い、読んでみました。

ちなみその根拠論文と言われているのはこちらです。

Pharmaceutical Industry–Sponsored Meals and Physician Prescribing Patterns for Medicare Beneficiaries

ちょっと驚くのが、インパクトファクター20弱のJAMA internal medicineに、

こういう論文が掲載されるんだなぁと思います。

無料で取れますので、興味ある方読んでみると良いと思います。

論文の要約

タイトル
Pharmaceutical Industry–Sponsored Meals and Physician Prescribing Patterns for Medicare Beneficiaries

「製薬業界から提供される食事とメディケア患者への処方パターン」

※メディケア というのはアメリカの公的医療保険制度のことです。

目的
業界支払い総額の約80%を占める医師への食事と、メディケア患者への薬の処方率との関連を調べる。

試験デザイン
2013年の8月1日から12月31日までの連邦政府によるオープンペイメントプログラムのデータの断面分析、および2013年の全てのメディケアパートDの個々の医師に対するデータの処方。参加者は、4つの薬物クラスのいずれかにメディケア処方を書いた医師、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、およびアンジオテンシン受容体遮断薬(ACE阻害薬およびARB)、ならびに選択的セロトニンおよびセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SSRIおよびSNRI)。各クラス(それぞれロスバスタチン、ネビボロール、オルメサルタン、およびですベンラファキシン)で最も処方されているブランド薬を宣伝する業界主催の食事を受け取ったいしを特定し、解析。データ分析は2015年8月20日から12月15日まで行われました。

※オープンペイメントプログラムは米国政府が製薬業界から医師への支払い状況を公開するプログラムのこと

結果
合計279,669人の医師が、4つの標的薬に関連して63,524(回)の支払いを受けた。支払いの95%が食事で、平均値は20ドル以下でした。ロスバスタチンはスタチン処方の8.8%を占めた。ネビボロールは心臓選択的β遮断薬処方の3.3%を占めた。オルメサルタンはACE阻害薬およびARB処方の1.6%をしめた。そしてデスベンラファキシンはSSRIおよびSNRI処方の0.6%を占めた。関心のある薬を促進する単一の食事を受けた医師は、ほかのスタチンよりもロスバスタチンの処方率が高かった。ほかのβ遮断薬よりネビボロール、ほかのACE阻害剤およびARBに対するオルメサルタン、およびほかのSSRIおよびSNRIに対するデスベンラファキシン。追加の食事の受け取りおよび20ドルを超える費用の食事の受け取りは、より高い相対処方率と関連していた。

結語
業界主催の食事の受け取りは、宣伝されていたブランド薬の処方率の上昇と関連していました。調査結果は因果関係ではなく関連を表している。

考察してみる

MRから食事提供を受けた医師は提供を受けなかった医師と比べ、

ロスバスタチンの処方確率が、

1.18倍になっております。ただ、元々の処方シェアが8.8%と大きいです。

抗うつ剤プリスティークはシェア0.2%と苦戦する中、

接触できた医師には処方確率が2倍に増えてます。

結論としては、医師の処方とMRからの食事提供に相関は確認されたものの、

因果関係はわからないとなっています。
(米国はMRでは無いですがここはあえてMRと記載してます)

また、日本で一般的に言われているような、

食事提供をする事で処方しなくて良い薬剤が処方されている、

いわゆる不適切処方に繋がっているという記述はありませんでした。

なので、日本の巷で言われている、MRから提供されるお弁当が、

処方に影響を与えているから提供するのは全面的にやめろ!とか、

学会でのランチョンの際のお弁当も禁止にしろ!など、

これは飛躍した解釈だと思います。

この論文は元々ブランド品処方への影響を見ている




この論文は読んでみると分かるのですが、

元々はMRから食事提供される事で後発品の処方に影響が出て、

ブランド品が処方されているということが書かれています。

食事提供の回数が増える事で、

ジュネリック製剤を押しのけてブランド品の処方率をあげようという関係がある事を、

みている側面が大きいと感じます。

製薬会社からの説明会は悪なのか?

ではお弁当提供をして製薬会社から説明会を行いプロモーションを行うことは悪なのか?

ということですが、

これは論文のディスカッションの中頃に書いてありましたが、

5ヶ月分の支払いデータと1年分のメディケア処方データをリンクしただけなので、

本当に食事提供と処方率が先行されているのか?しなかったのか?、

一時的に関係してるのか、もしくは無関係なのか?それは明確には判断できない。(今後の課題)

また食事提供を行う製薬企業のイベントが、

新しいエビデンスおよび臨床ガイドラインについて医師に知らせる事によって、

医師に処方の影響を与えた場合、製薬企業からの食事提供の受領は、

患者の治療に役立つ可能性がある。

と記載されており、

僕は冒頭にも書いた通り説明会の時のお弁当が処方に影響を与えているというよりは、

その内容に大きなファクターがあると思っています。

今はその内容に不適切な内容(適応外や拡大解釈)が無いようにトラッキングされたりしてます。

また、

元々その医師が食事を提供する製薬企業の薬剤に好意的だった場合、

食事提供を行っても処方パターンに影響を及ぼさない可能性がある。

とも記載されています。

なので、日本で言われている、弁当説明会が不適切処方を助長してるというのは、

拡大すぎる解釈なのでは無いかと思うのです。

ただ、別に弁当に限った事ではありませんが、

これまで製薬企業の不適切なプロモーションというのはありましたので、

その辺はしっかり襟を正さなければいけないと思います。

食事提供を受けない説明vs食事提供を受けた説明じゃ無いと意味がない

個人的に気になったのは、

出てくるfigureが、20ドル以上の食事提供 or 20ドル未満の食事提供なのですが、

これはそもそも、

食事提供を受けてないけど説明を受けた群と

食事提供を受けて説明を受けた群、で比較しないと、

本当の意味で食事提供に影響されているのかはわからないのでは無いかと思いました。

食事提供を全く受けてないけど説明も受けてない群と比較しても、

ちょっとそれは違うんじゃないかと。

最後に

日本で説明会を行う場合、

やっぱりお金を出して説明会を行うわけですので、

弁当出して有効性を説明できない製品の説明会ってやらないと思うんですよね。

弁当出して(お金出して)まで説明する必要はないので。

弁当を出してまで説明する製品だから弁当のバイアスになるって事なので、

それ以上でもそれ以下でも無いと僕は思いました。

以上です。




 

 

コメント

  1. 独身MR より:

    このペーパーを根拠に弁当が処方誘引だと結論を出すのは、あまりにも安易だし浅はかだなと思いました。

    そもそも、新しい薬剤、まだ未使用な薬剤は医師が情報提供を受けることで、単純に既存薬より優れているかもしれないと判断したから処方するパターンは非常に多いと思います。
    MRがPRする薬剤自体が、まだ世に出て評価が確立してされてなかったり、医師が知らないモノも多いので、それを知ったら使ってみたくなるのが医師としては当然の感情ですよね。
    ロスバスタチンなんて、もともとそのクラス中で最も評価の高い薬剤なので、そりゃ情報提供されたら使うだろ?とも思いますしね。

    • 大作 大作 より:

      ロスパスタチンって評価高いんすね!
      正直ここに出てくる薬のことあんまよく知らなかったので、
      全然そこに触れられなかったんですよね。

      MR歴10年の僕からしたら、弁当出して処方取れるとか処方が今より増えるとか、
      絶対無いと思いますけどね。
      医者をバカにしとんかと思ってしまいます。

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