どうもこんにちは、だいさくです。
アッヴィのオンコロジー部隊が立ち上がりましたね!
2019年11月にオンコロジー製剤として初めてのベネトクラクスが、
CLL(慢性リンパ性白血病)に承認になりました。
アッヴィがオンコロジーにやってくる!求人募集が間近!
おそらくアッヴィを知らない人はいないと思いますが、
アッヴィはオンコロジーはまだ立ち上がって間もないですが、
それ以外の領域はまさに絶好調、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してる会社です。
2018年にはアボットから分社化されて以来初めての、
国内製薬企業売り上げトップ20入りを果たし、
毎年二桁近い成長を果たしてきました。
「ヒュミラ」やC型肝炎の治療薬である「マヴィレット」も、
伸長しており、その成長を牽引しました。
そして、かねてからずっと予想されていたアッヴィのオンコロジー領域の求人募集ですが、
やっと動きがありそうなので、
今回アッヴィのオンコロジー領域についてまとめてみたいと思います。
アッヴィ合同会社とは?
【設立】2013年
【本社】イリノイ州ノースシカゴ (日本)東京都港区芝浦
【従業員数】約30,000人 (日本)約1,200人
【社長】リチャードAゴンザレス (日本)ジェームス・フェリシアーノ
アッヴィは2013年にアボットラボラトリーズ社から分社化されて誕生した、
バイオ系医薬品企業です。
アボットは世界で130年ほど歴史のある製薬会社で、
その医薬品新薬部門だけを分社化してできたのがAbbVieで、日本ではアッヴィ合同会社です。
ちなみにこの「合同会社」って一体何?かというと、
経営者と出資者が同一であるケースに用いられるそうです。
会社の経営者と所有者が異なっている場合には合同会社にする事ができないため、
合同会社にすると、設立にかかるコストを削減できたり、基本的に決算公表義務もありません。
比較的小さい会社で用いられるパターンになりますが、アッヴィはとても大き会社です。
合同会社に関してもっと知りたい方はこの記事がわかりやすかったです。
日本法人の社長は、ジェームス・フェリシアーノさんという方です。
※アッヴィHPより
アメリカ人の方で(出身はオーストラリアのよう)、ミシガン大学日本学科修士課程を修了、コーネル大学で MBAを取得。
その後、キャノン、ファイザー、ワイスを経て、メルクセローノで社長を務めた後、
アッヴィ日本法人の社長に就任しています。
一度お話ししてる動画を拝聴したことがあるのですが、
さすが日本学科を修了してるだけあってめちゃくちゃ日本語が上手いです!
これだけ日本語が上手いと、下で働いている日本人の方は楽なんだろうなぁと思います。
アッヴィといえば、ヒュミラ、マヴィレット
アッヴィは2013年に分社化されて以来、5年間という短い間で、
毎年、年平均8.9%成長を遂げました。
そして日本法人の社員数も設立から1.6倍に増え、現在では1200人程度になっております。
その急成長を支えたのが、ヒュミラ、マヴィレットであると言えます。
ヒュミラは元々アボット時代に導入された薬剤で、
自己免疫性疾患に対する抗TNFα抗体になります。
2018年世界で最も売れた薬剤でダントツだったのがこのヒュミラで、
その額なんと2兆8千億!
※アンサーズニュースより
日本でも年430億程度の売上があり、
アッヴィの成長を大きく支えた薬剤であると言えます。
またマヴィレットはC型肝炎治療薬ですが、
2018年度は国内で約1,320億円程度販売され、国内で一番使用された薬剤になります。
アッヴィのことをよく知らないけど、
オンコロジー領域の立ち上げには興味あるという方は、
アッヴィの成長を支えたこの2剤のことは覚えておいても良いと思います。
アッヴィは主要薬剤たった3つで世界8位、利益ベースは世界4位に
ちなみにもう一つ小児のRSウイルスの薬剤がありますが、
これもまた日本で約500億程度の売上があり、大成功してます。
なんとアッヴィはこの3つの薬でこの業界を席巻し大成功し、
世界第8位、利益額ベースではなんと世界4位まで大躍進しました。
色々な薬剤に手を出す会社ではなく、
ベストインクラス、ファーストインクラスで勝負する、
勝負ができる会社であると思います。
アッヴィオンコロジーの将来性
これまでは、自己免疫疾患、新生児、CNS、肝疾患領域の、
4つの主力ポートフォリを有しているアッヴィですが、
2020年から本格的にオンコロジー領域に参入されると考えられます。
最初はベネトクラクスを導入して、慢性リンパ性白血病(CLL)及び、
小リンパ球性リンパ腫(SLL)で承認取得。(2019年11月に薬価収載済み)
その後は急性骨髄性白血病(AML)(海外承認済み)、
多発性骨髄腫(MM)、でP3が実施されており、
こちらでも適応取得されるのではないかと予想されます。
※多発性骨髄腫は2019年のASHの結果でPFSはメットしましたが、OSが対照群に逆転されており、今後の開発状況はまだわかりません。サブセット解析をみると、一部の転座症例で効果がありそうなので、そこだけに絞っって行う可能性がありそうですが、まだ明確にはわかりません。
また血液領域ではマスの大きいB細胞性を中心としてリンパ腫や骨髄異形成症候群(MDS)での開発も始まっています。
血液腫瘍以外には、
PARP阻害剤ベリパリブがすでに申請段階にあり、日本ではAZに次ぐ二番目のPARP阻害剤になります。適応は恐らく卵巣癌で取得するのではないかと思います。ただ、これは僕の予想ですが、PARP阻害剤は様々な会社が開発しており、アッヴィのPARPがベストインクラスではない可能性もあるので、もしかしたら導出する可能性もある気がします。
いわゆるADC(抗体薬物複合体)において固形癌を中心に11の臨床試験が進行中です。
こちら現在のアッヴィオンコロジーのパイプラインを簡単にまとめたものです。
薬剤名 | 疾患名 | Phase | 備考 |
venetoclax (BCL-2阻害剤) |
R/R慢性リンパ性白血病 (リツキサン併用) |
海外承認済み | 日本では2019年11月に発売 |
慢性リンパ性白血病 (1stライン) |
P3 | 主要評価項目達成! | |
急性骨髄性白血病 | P3 | 米国承認済み →日本は恐らく2021年頃 |
|
多発性骨髄腫 (VD療法との併用) |
P3 | 2019年ASHでOSで逆転されており今後の開発状況は不明 | |
veliparib (PARP阻害剤) |
卵巣がん | P3 | |
乳がん | P3 | ||
肺がん | P3 | ||
rovalpituzumab tesirine(抗DLL3のADC) | 小細胞肺癌(ファーストライン) | P3 | 効果不十分のため中止の可能性あり |
depatuxizumab mafodotin(抗EGFRのADC) | 悪性神経膠腫 | P1/2 | 日本国内 |
膠芽腫(こうがしゅ) | P3 | グローバル | |
telisotuzumab vedotin(抗cMETのADC) | 非小細胞肺癌 | P2 | 日本も参加 |
ABT-165(抗DLL4/VEGF 二重特異性抗体) | 固形がん | P2 | グローバル |
navitoclax(BCL-2阻害剤) | 骨髄線維症 | P2 | グローバル |
※ADC=Antibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)
イブルチニブ、エロツズマブも海外の一部ではアッヴィ社が販売してますが、
日本ではヤンセン社、BMS社が販売しておりますので記載してません。
まだまだあるアッヴィオンコロジーのパイプライン
上記のようなものになりそうなパイプラインだけでも魅力的なんですが、
記載すると果てしなく長くなりそうなので、
アッヴィジャパンのパイプラインだけでも見ておくと良いと思います。
ちなみにBCL-2はがん細胞で全体的に発現しているので、
ベネトクラクスは血液がんに限らず開発がされていくと思います。
世界的には臨床段階の試験もさることながら、
1st in humanの試験が2019年だけで7つ行われております。
日本も世界も同時開発することを心がけているので、
その辺のドラッグラグはないと考えられます。
特にADC系の薬剤のコンパウンドが非常に多くて個人的にかなり期待していたんですが、
ROVA-Tが失敗しているんですね。。。
ADCの抗体、リンカー、薬物の改善を進めるとされておりますので、
開発は進んでいくと思いますが、
ADC系の薬剤は今後オンコロジーの主流になっていくと考えるので、
期待したいですね。
アッヴィオンコロジー立ち上げのカギを握るベネトクラクスとは?
アッヴィオンコロジーが立ち上がってまず取り扱う薬剤がベネトクラクスという薬剤です。
上述の通り、再発難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)で、
日本では2019年11月に薬価収載されました。(大体月に100万円程度の薬価です)
その後、急性骨髄性白血病(AML)で適応追加になる予測がされています。
ではそのベネトクラクスという薬剤ですが、どのような薬剤でしょうか。
ベネトクラクスの作用機序
※wehi.edu.auより
ベネトクラクスはBCL(B cell Lymphoma and leukemia)-2に対する阻害剤です。
通常、正常な細胞がダメージや傷を受けてしまうと、異常細胞となったり、
がん細胞となってしまったりします。
そのため細胞には「アポトーシス」という、
自然に死んでいくことができる機能が備わっていますが、
はじめに適応となるCLLを含めて特にB細胞性のがんには「BCL-2」と呼ばれる、
抗アポトーシスタンパク質を過剰に発現してることがわかっています。
なのでこのBCL-2が発現してしまうと、がん細胞がアポトーシスをしてくれません。
なのでBCL-2は抗アポトーシスタンパク質と呼ばれるのです。
また、このBCL-2は抗がん剤の耐性にも関与しているとも考えられていて、
通常BCL-2は細胞の中のミトコンドリアの中に存在していると言われていますが、
ベネトクラクスはそのBCL-2を阻害して、
がん細胞のアポトーシスを誘導する薬剤になります。
ベネトクラクスの臨床成績
ベネトクラクスは現在CLLとAMLにおいてP3試験の結果が公表されています。
こちらCLLの臨床成績です。
試験名:MURANO試験 | ベネトクラクス+リツキサン | トレアキシン +リツキサン |
PFS中央値 | NR(未到達) | 17ヶ月 |
HR=0.17,p<0.001 | ||
36ヶ月時点推定PFS維持率 | 71.4% | 15.2% |
2年時点の全生存率 | 91.9% | 86.6% |
HR=0.48 | ||
3年推定全生存率 | 87.9% | 79.5% |
G3/4の有害事象発現率 | 82.0% | 70.2% |
少しわかりにくいかもしれませんが、この試験の結果は標準治療である、
トレアキシン +リツキサンに対して非常に良好な成績となっています。
ベネトクラクス群では2年間の投与を行い、その結果、副作用の発現頻度はやや増加しますが、
この試験ではMRD(微小残存病変)という指標もとっており、
MRDは血液癌ではポピュラーな指標ですが、固形癌ではあまり馴染みがないと思います。
血液癌では画像やマーカー上では癌が消失していても実際は残っていることが多々あります。
※図はAMLの指標ですが、通常「寛解」と呼ばれる段階でもまだまだがん細胞が残っていると考えられるが、MRDの指標を用いると今まではわからなかった少量のがん細胞の量がわかると考えられます。
そのためMRDという指標を持ちいて、目に見えない癌を検出するんですが、
これが陰性になると高い確率で再発が抑えられると言われています。
一部の白血病の指標でMRDが陰性だと3年再発率は0%、
陽性だと90%以上になると言われています。
なのでこのMRDを陰性にさせるために治療を行うのですが、
そのMRDの陰性達成率がベネトクラクス群で約63%程度の患者さんで見られていますが、
対照群では陰性がほとんどみられいません。
ベネトクラクスの凄いところはこれなのです!
ちなみにそこには時代の背景もあると思いますが、競合だと思われるヤンセン社のイブルチニブはピボタル試験ではMRDの指標を計ってません。
ヘリオス試験?と言う名前の試験では計られているんですが、大体陰性率30%程度です。(もちろん別試験なので比較できるものではありません)
ただ、MRDは海外で計られているものと同じものが日本では使えませんし、
CLLでは適応になってないので、机上のお話になると思います。
詳細が発表されておりませんが、
副作用が多く出ていることが気になりますが、
この効果であればそこまで大きなネックになることはないと思います。
一番苦労しそうなのはTLSという、腫瘍崩壊症候群です。
効果が高すぎてしまうために腫瘍が一気に崩壊して腎臓を痛めるという副作用です。
これは注意しないと死に直結してしまいます。
そのためベネトクラクスの投与方法は最初の1ヶ月は漸増期として、
徐々に薬剤の量を増やしていく投与方法になっています。
※具体的な投与方法に関しては添付文書をご覧ください。
アッヴィオンコロジー今後のタイムライン(予測)
アッヴィオンコロジーですが、営業部門は既に立ち上がっていて、
まだCLLのみの適応なので、20人程度の部隊になるかと思います。
多分、日本でのAMLでの適応が見えてきたら大きく拡大していくのではないかと思います。
AMLは2021年頃の適応追加になると思うので、
2020年の夏ころに募集がかかるのではないかと予想してます。
アッヴィオンコロジーの案件はランスタッドが取得しているという情報があります。
現在のパイプラインを見てみると、画期的な新薬と言える薬がとにかく多いです。
ベネトクラクスもそうですが、ADC系の固形癌は個人的に注目しております。
最初はベネトクラクスを扱う血液腫瘍部隊からはじまり、
その後固形癌の流れになっていくと考えられます。
アッヴィオンコロジーへの転職は魅力的である
アッヴィオンコロジーへの転職は非常に魅力的であると言えます。
まぁ多分オンコロジー領域で10年は食いっぱぐれない会社はアッヴィと、
AZくらいしかないんじゃないかと思います。
僕は最初の血液部隊から入ったほうが絶対に良いと思います。
なぜなら、血液部隊の後にうまくいけば固形癌部隊が出来上がるので、
固形癌部隊は競合も多く、患者数も多い疾患もあるので、
その際にかなり大きなExpansionが見込まれます。
実際いくつかの記事でも未来的には数百人規模での採用も見据えていることが示唆されています。
そのため立ち上げで入ったメンバーのキャリアへの希望が持てます。
それなりにベネトクラクスおよび、ADCの開発がうまくいけば、
10年くらいは間違いなく安泰だと思われます。
最後に
ベネトクラクスは自分でもよく知っている薬剤だったんですが、
今回固形癌に対する薬剤のことも調べて見ましたが、
今のパイプラインの半分でもうまくいけば、
個人的な予測としては、
血液癌領域と固形癌領域で別れてもおかしくないのではないかと思うような規模になると思います。
アッヴィとしての歴史は浅い会社ですが、
実はオンコロジーの開発は2008年頃からがっつり開発費を投じているんですよね。
中々失敗が多かったんですが、今回ものになる薬が沢山出てきそうでやっぱ凄い会社ですね。
領域によって考え方も違うような印象の会社ですが、
未来は楽しそうな会社の一つだと思います。
社員紹介での転職も優先されているそうですが、
エージェントからの採用も間違いなくあります。
当初はランスタッドが扱っていたそうですので、やはりそこは強いと思います。
製薬企業全体的に案件を見てみたいという方はこちらの記事もご参考ください。
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では!
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